『自炊。何にしようか』(著者:高山なおみ / 出版社:朝日新聞出版)
料理家・文筆家の高山なおみさんが、神戸に引っ越し一人暮らしをはじめてからの「ひとり分のごはん」の自炊アイデアをまとめたレシピ本。
編集は赤澤かおりさん、写真は齋藤圭吾さん、デザインは立花文穂さんが手がけ、レシピ本ではあるけれど、もっと生活に密着したような作りになっていて読みながら料理の匂いだけでなく、高山なおみさんの部屋の空気や季節ごとの風の匂いまで伝わってくるようです。
高山さんが台所に立ちながらぽつりぽつりと喋る話し声を隣で聞いているような文章と共に、朝、昼、夕によく作るごはんのレシピや、夏、冬の季節のレシピが紹介され、これがまたどれも美味しそうなのでつい食べてみたいと思う料理ばかりなのです。
私がお気に入りのレシピは、「ピーマンのワタ入りきんぴら」。
「きんぴらにするピーマンは、ワタを取らなくなった。ワタをつけたまま炒めると、ねっとりとした感じになっておいしい。白ごまをたっぷり加えると、ごまだか種だかわからなくなるところもいいなと思う。」
―131Pより引用
手を動かし、素材の声を聞きながら料理をすると、ひとつの素材ごとに使い方が変わる。
それには自分の感覚をひらき、想像力をはたらかせながら目の前の素材と向き合うことが必要で、レシピどおりに作ろうとしたり、考え事をしながらではできない思いつきや発見が、本書の中にはたくさん詰まっています。
ピーマンもヘタに近いところのほうがお尻のほうより固いから細めに切る、など、「たしかに本当だ~」と気づかされることが多く目からウロコでした。
そんな素材との向き合い方や料理をするときの姿勢までも教わるような読んでいて楽しいレシピ本です。