デンマークの首都コペンハーゲンからスウェーデンの首都ストックホルム行きの電車に乗りこみ3時間半ほど移動するとスウェーデンのカルマルへと到着する。スモーランドと呼ばれるこの辺り一帯は、あたり一面が湖と森に囲まれたとても身体的にも精神的にも空気がとても美味しい。
このスモーランドの玄関口ともいえるカルマルからヴェクショーという場所までは18世紀からガラス産業が栄えたこともあり、GLASRIKET=ガラスの王国と言わている。というのもガラス製造に欠かせない砂や灰、木材といった資材が豊富にあり、そして何よりもこの森と湖の澄んだ景色がガラスを作るのに最適な環境だからだ。このガラスの王国には大小・15前後のガラス工場が集まっており、その中の代表格として現在でもガラスメーカーとして有名な1724年創業のコスタ ボダ(KOSTA BODA)と1898年創業のオレフォス(Orrefors)がある。18世紀中頃ガラスの工房が始まり、ガラス需要の高まりとともに産業は広がっていった。
スウェーデン・グラスクルフ/Gullaskruf社もその一つ。1893年にスウェーデンのグラスクルフという町でビール瓶や窓ガラスを製造したことから始まる。1922年に一度閉鎖されたが、1927年にオーナーが代わりGullaskrufs Glasbrukとして再始動し、ホームユースのガラスプロダクトの製造にも力を入れ、在籍デザイナーには、Hugo Gehlin、Arthur Percy、Lennart Andersson、Kjell Blombergらがいた。中でもLennart Anderssonはフラワーベースやカラフェ、グラスなど、ビジネスユースの技術をふんだんに活かしつつ、実用的かつ、モダンなデザイン性を探求したプロダクトが作られていった。
特筆すべきなのが1950年代に多く製作されたISI Kubシリーズの花瓶。
表面上は一見シンプルな直方体のフォルムなのだが、内側に微細に盛り上がっていることで水をベースを入れた際に見える水面が有機的に印象づける。
さらに当時の最先端技術であったガラスの表面に施した細かい溝は無機質なフォルムに一定のリズムを奏でる。
華美なデザインを施すことなく、シンプルに削ぎ落とされたモダンデザインは70年以上経った現代でも違和感なくどのような空間にも馴染んでいく。
Size: D5cm×W16cm×H11cm
Designer: Lennart Andersson
Manufacturer:
Gullaskruf
Origin: Sweden