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How is Life ? - 地球と生きるためのデザイン

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How is Life ? - 地球と生きるためのデザイン / 著者・平尾しえな、ゴリオミティ・アナスタシア、監修・塚本由晴、千葉 学、セン・クアン / TOTO出版



顧客から当事者へ



ここ数年夏がとても暑く、そして長い。そして長い夏が終わりようやく秋かと思ったのも束の間、冬の入りはいつも通りなので四季どころか二季なのでは?なんてメディアでは冗談めいて言われることがある。もしかしたら、自然のあまりない都市にいると、そう感じやすのかもしれないが、年がら年中畑で農作業に勤しんでいると、そんな気候の変化の中であっても季節のグラデーションのような変化は四季どころか二十四節気で感じることができる。そもそも空気がガラリと変わるのだ。

そんなことを偉そうにいっている自分も数年前は都市で住む身であったため、そんな変化のへの字も気が付かないでいた。移住をして生活環境を変えたからそういうことを感じるようになったのだろうと思われがちだが、移住したからといって必ずしもそうした変化に気が付くとは限らない。だとしたら自分の場合は大地に触れる経験、つまり地球と戯れる経験を経てこそのことなのだろう。


今までは梅干しはスーパーで買うものだと思っていたけれど、こちらでは作るもの。梅雨の始まりに梅の木に実がなり始め、梅雨の終わりかけの時期に成った梅が熟れ始めたころに収穫する。そして梅雨が明けて、土用前後の晴天の続く3日間で夜露にも当てながら土用干しなるものをしてようやく梅干しにありつける。この工程を文章にしただけでも、季節の変化や流れを感じ取っていただけるのではないだろうか。先のようにスーパーで梅干しを何も感じずに手に取ることもできるが、生活の当事者としてそこに関わると、自ずと地球の一連の変化を感じそしてその恵みを持って味わいなども変わってくることだろう。

これからの時代は、いかに美味しい梅干しを何処かで買うかという顧客視点ではなく、いかに美味しい梅干しができるのだろうかという問いの元、作る側の当事者へと視点を移すことが豊かに生きるヒントなのかもしれない。


さて、本書『How is Life - 地球と生きるためのデザイン』は、2022年10月21日から2023年3月19日まで、東京・乃木坂にある「TOTOギャラリー・間」で開催された同名展示会の記録集となっている。産業革命以降、成長を是としてきた人類の活動は、プラネタリーバウンダリーを超え、気候変動や南北格差をもたらした。地球の自然再生能力に見合った「成長なき繁栄」の時代に、われわれはどう生きるべきか、そのために建築はどうあるべきか?

建築というキーワードが出ているけれど、読み進めてみると生きるための活動をどのような視点を持って重なっていくのかということが衣食住の「住」つまり暮らしをベースにまとめられている。


経済成長に限界がきている昨今、これからは顧客視点ではなく、いかに当事者で考えていくべきかということを考えさせられる一冊だ。


<目次>

introduction

「How is Life?」ができるまで|塚本由晴


  Projects

Capital Agricole、La Ferme du Rail、都市林業、ReBuilding Center JAPAN、小さな地球 、Land and Labor、石積み学校、茅葺普請、Tool Shed、Bicycle Urbanism、Bikeable、15-Minute City、Floating Farm、Community Toilets for SPARC、神水公衆浴場、動いている庭、How to Settle on Earth、東京湾計画、Wheatfield – A Confrontation、藤村記念堂、A tree; a corporation; a person.


  Talk Session

How is Life in Paris?|Augustin Rosenstiehl × Clara Simay×田根剛

「Service Shed」から「Tool Shed」へ:21世紀のビルディングタイプ|久保明教 × 塚本由晴

身体から建築を捉えなおす|伊藤亜紗 × 千葉学

現代におけるキュレーターの役割|Giovanna Borasi × セン・クアン


  Afterword

「How is Life?」は続く|筏久美子



【監修者】

塚本 由晴

建築家。1965年生まれ。1987年東京工業大学工学部建築学科卒業。1987~88年パリ・ベルビル建築大学。1992年貝島桃代とアトリエ・ワン設立。1994年東京工業大学大学院博士課程満期退学。1996年博士(工学)。UCLA、Harvard GSD、Columbia GSAPP、Cornell AAP、KADAK他で客員教授を歴任。現在、東京工業大学大学院教授。

千葉 学

建築家。1960年生まれ。1985年東京大学工学部建築学科卒業。1987年同大学院修士課程修了。日本設計、ファクターエヌアソシエイツ共同主宰、東京大学工学部キャンパス計画室助手、同・安藤研究室助手を経て、2001年千葉学建築計画事務所設立、東京大学大学院准教授に着任。2009~10年スイス連邦工科大学客員教授ののち2013年より東京大学大学院教授。

セン・クアン

建築史家。1976年生まれ。2011年ハーバード大学大学院博士課程修了。現在、米ハーバード大学デザイン大学院講師、東京大学国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)特認准教授。専門は日本現代建築史。2020~21年『a+u』誌チーフ・エディトリアル・アドバイザー。

田根 剛

建築家。1979年生まれ。2002年北海道東海大学芸術工学部建築学科卒業。デンマーク王立アカデミー客員研究員。ヘニング・ラーセン、デイヴィッド・アジャイ事務所を経て、2006~16年Dorell. Ghotmeh. Tane / Architects共同主宰(パリ)、2017年Atelier Tsuyoshi Tane Architects設立(パリ)。2012~18年コロンビア大学GSAPP。現在は多摩美術大学で客員教授。



【共著者】

平尾しえな

1992年埼玉県生まれ。2017年東京工業大学工学部建築学科卒業。2018~19年スウェーデン王立工科大学KTHに交換留学。2021年東京工業大学環境社会理工学院建築学系修了。同年より、同大学院博士後期課程および一般社団法人小さな地球に在籍。

アナスタシア・ゴリオミティー

1992年ギリシャ・アテネ生まれ。2018年アテネ国立工科大学院修了。日本の文部科学省から奨学金を受け来日し、2019年からは東京工業大学塚本研究室の博士後期課程に在籍。2021年「ラドプロス製紙工場の再生」(ギリシャ・パトラス)で最優秀賞を受賞。

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