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動的平衡は利他に通じる

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動的平衡は利他に通じる / 著者・福岡伸一 / 朝日新聞出版



命の理




ウリ科の野菜、ズッキーニやかぼちゃなどを育てていると、双葉が出て本葉が一枚で始めた頃に、ウリハムシというウリ科の葉を食べてしまう小さな虫が至る所から葉に集まり、というか集り始めあっという間に虫食いで穴だらけにされてしまう。農を始めた頃はこの現象に一喜一憂しながら、そのボロボロにされた葉を眺めてもうダメかという気分にさせられる。けれど毎回なのだが時間が経つとあれだけボロボロにされた葉の下の株元から新たな本葉が出始めて半月も経てば立派なズッキーニやかぼちゃの実が実り始めるから不思議なものだ。

本書『動的平衡は利他に通じる』の中で、著者の福岡伸一さんは、「生命は利己的ではなく、本質的に利他的なのだ」と語られる。利他性を相手に渡すことで自分の存在だけでなく相手も生かしながら生きながらえているということらしい。この言葉を頼りに先のウリハムシのことを考察してみると、ウリ科の野菜はともすると自らの命の一部をウリハムシに分け与えているとも言えるのではないだろうか。そしてそのウリハムシは他の虫や鳥たちに自らを分け与えることで生命という連鎖を維持しているという命の理の理解に通ずる。こうして理解すれば、ズッキーニやカボチャの葉がボロボロにされてしまうのも、自分の中で納得いくものなのだろうか。いや、自分は未だその納得ができる境地にまで至っていなく、毎年ウリ科を定植する6月付近はソワソワしてしまうものなのだ。


生命の基本原理とは、他者のエントロピー(乱雑さ)排出を、

もういちど秩序あるものに作り返して成立する互恵的な関係性にある。

動的平衡は利他性によって支えられており、

進化も利他的共生が織りなしたものなのである――。


本書『動的平衡は利他に通じる』は分子生物学者の福岡伸一さんが、氏の代名詞とも言える『動的平衡』というキーワードを軸に朝日新聞に連載していたエッセイを加筆修正してまとめた内容になっている。『動的平衡』というキーワードに馴染みがなく、なんだか難しいそうと思っている方にこそ、ぜひページを開いてみて欲しい。新書の一ページほどのエッセイに目を通せば、あ!こういった感覚が『動的平衡』といえるのか、と新たな視点を得られたように思うはずだ。




<目次>

新書化にあたって

1 生命の惜しみない利他性

2 内部の内部は外部

3 「記憶にない」ことこそ記憶

4 追い立てるのではなく

5 問い続けたい「いかにして」 

6 やがては流れ流れて




福岡伸一
1959年東京生まれ。京都大学卒。
米国ハーバード大学研究員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学総合文化政策学部教授。分子生物学専攻。専門分野で論文を発表するかたわら、一般向け著作・翻訳も手がける。
2007年に発表した『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)は、サントリー学芸賞、および中央公論新書大賞を受賞し、67万部を超えるベストセラーとなる。他に『プリオン説はほんとうか?』(講談社ブルーバックス、講談社出版文化賞)、『ロハスの思考』(ソトコト新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『できそこないの男たち』(光文社新書)、『動的平衡』(木楽舎)、『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)、週刊文春の連載をまとめたエッセイ集『ルリボシカミキリの青』(文藝春秋)など、著書多数。
最新刊は対談集『エッジエフェクト−界面作用−』(朝日新聞出版)。
現在、ヒトがつくりかえた生命の不思議に迫る番組、NHK—BS「いのちドラマチック」に、レギュラーコメンテーターとして出演中。また、生物多様性の大切さを伝えるための環境省の広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーもつとめる。

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