いぬ / 著者・ショーン・タン、翻訳・岸本佐知子 / 河出書房新社
魂との交流
犬と人との関係は約1万五千年前から育まれてきたそう。人に対して忠誠心を持つ犬、そして無性の愛情を犬に対して注ぐ人。もちろん全てがこういった構図になるわけではないし、それぞれが異なる言葉を使っているので完全なコミュニケーションを取ることができる訳ではないので通じ合えない部分はもちろんあるのですが、そうした障壁があるからこそより一層深く繋がれるのかもしれません。
本書は、オーストラリアのイラストレーターで絵本作家、そして動物系のSFものを描いているショーン・タンが2020年に刊行した『内なる町から来た話』に収録されていた『いぬ』をシングルカットされた一冊になっています。
犬と人の関係性が言葉と絵で綴られているのですが、表面上は異なる生命の犬と人の心がくっつき、そして離れていく様がとても感覚的に表現されています。
犬と人。その奥には血の通う生命同士であり、そこにある魂は通じ合っているのでしょうね。
ショーン・タン
1974年オーストラリア生まれ。絵本作家。本書のほか、『遠い町から来た話』『セミ』『内なる町から来た話』など。リンドグレーン賞、グリーナウェイ賞など受賞多数。『ロスト・シング』でアカデミー短編賞受賞。
岸本 佐知子
1960年生まれ。翻訳家。訳書に、ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジュライ『最初のは悪い男』、ベルリン『すべての月、すべての年』、ソーンダーズ『十二月の十日』、タン『内なる町からきた話』など。