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デンマークの建築: サステナブルで快楽的なデザインで社会を導く

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デンマークの建築: サステナブルで快楽的なデザインで社会を導く / 著者・山下 朋文、蒔田 智則、森田 美紀、金田 泰裕、岡村 彩、宇田川 裕喜 / 学芸出版社



人間のための建築



北欧を旅していると街を歩いているだけでも快適さを感じることがある。それは機能的にも視覚的にも。ここにスツールがあったら、ここに木漏れ陽が美しい街路樹があったら、というものが大体そこにはある。

特にデンマークの首都コペンハーゲンは制度で規律がしっかりとしたまちづくりというよりかは、どこか緩さを感じる。だけれどクリーン。そして先にあげたちょっとした気の利いた感じが多くの場所で見受けられるから、歩いているだけでも、こころが弾んでくるというわけだ。

きっと合理的と言われる国民性ではあるものの、それは機械のようにプログラミングされた指示通りのことではなく、より人間味のある本質を考え対話し知恵を出し合うというごく当たり前のプロセスを疎かにしていないからなのかもしれない。合理的なのに人間味があるというその矛盾が面白く、魅力なのだ。


さて、本書『デンマークの建築: サステナブルで快楽的なデザインで社会を導く』はデンマークで活躍している日本人建築家たちが現代のデンマークの建築における特徴をわかりやすくまとめた一冊。

BIG、Cobe、Third Nature、 JAJA Architects、Arcgency…といった知る人ぞ知る気鋭の建築家による高いサステナビリティを実現しながら遊び心溢れるデザインで人気のプロジェクト、デンマークのユニークネスを育む社会のしくみを紹介しているのだが、本国の著書を翻訳というよくありがちなものではなく、あくまで日本人がまとめているという“日本人視点”というところがミソなのだと思う。

そのことによって、私たち日本人や日本ではどのような建築、いやまちづくりの計画を建築を通して考えていくべきなのか、という問いを文章の端々や行間から突き付けられているような感覚を覚えるのは僕だけではないはず。そのためには人間である私たちが感じる心地よさや快適さを定義するのではなく、対話を続けながらその糸口を忍耐強く探していくにほかならないのではないだろうか。


スキーもできるごみ処理場、雨を貯め水害を防ぐ公園、アップサイクル建材の住宅、共創を促すリビングラボ…。


建築が街をポジティブに変えるエコシステムを探る一冊。



<目次>

はじめに

序章 快楽的でサステナブルな建築


PART 1 建築のケーススタディ

Chapter 1 イノベーション

1-1 アマーバッケ/Amager Bakke

廃棄物処理施設を都市にひらく

1-2 アップサイクルスタジオ/Upcycle Studios

サーキュラーエコノミーを実現する集合住宅

1-3 ペーパーアイランド/Papirøen

暫定利用が場所の価値を高めた倉庫群の再開発


Chapter 2 インタラクション

2-1 スーパーキレン/Superkilen

鉄道車庫跡を移民が交流する公園へ

2-2 アブサロン/Absalon

リビングのように居心地のよいコミュニティセンター

2-3 アゴラハヴァーナ/Agorahaverne

高齢者の社会的孤立を防ぐコハウジング


Chapter 3 コラボレーション

3-1 Dokk1

ユーザー中心に設計・運営される未来の図書館

3-2 BLOX

イノベイティブな企業が世界中から集まるハブ


Chapter 4 サステナビリティ

4-1 UN City

11の国連機関が集結するプラチナ認証の環境建築

4-2 ノアハウン/Nordhavn

公民連携の資金調達スキームによる再開発モデル

4-3 インゲヘウ・クライメイトパーク/Enghaveparken

街を水害から防ぐ貯水システムを備えた公園


Chapter 5 ウェルビーイング

5-1 クーべ/Ku.Be

オープンで透明なコミュニティセンター

5-2 ハーバーバスとサウナクラブ/Harbour Bath

運河の水質改善を象徴するプールとサウナ


Chapter 6 ボトムアップ

6-1 クリスチャニア/Christiania

ヒッピー国家のエコシステム

6-2 コリング城/Koldinghus

200年前の遺構の魅力を現代に伝える創造的改修


PART 2 社会システムのデザイン

Chapter 7 人間中心のデザイン

7-1 アクティビティからデザインされる都市

7-2 都市のサステナブルな成長戦略


Chapter 8 資源への公平なアクセス

8-1 情報、人、空間への公平なアクセシビリティ

8-2 先進事業を支える資金調達のダイナミズム

8-3 ボトムアップの合意形成プロセス


Chapter 9 ホリスティックなアプローチ

9-1 ステークホルダーを巻き込む包括的アプローチ

9-2 建築産業が目指すカーボンニュートラル

9-3 リビングラボ、クラスターによる共創のネットワーク


おわりに




【編著者】

山下 朋文

日建設計サスティナブルデザイングループ。1992年生まれ。京都工芸繊維大学大学院修了。在学中にデンマーク王立アカデミー留学、その後に環境建築スタートアップLendagerの研究開発部門にて建築廃材再利用のためのリサーチとコンサルティングに従事。建設業界の資源循環型への移行・推進をミッションとする。2022年より現職。


蒔田 智則

シニア環境設備エンジニア、“空気のエンジニア”。1980年生まれ。日本大学理工学部土木工学科卒業後、イギリス・グリニッチ大学大学院建設学部、デンマーク工科大学大学院建築工学課程を修了。2017年より現職。コペンハーゲンを拠点に、国内外の多様な建築家と協働し、環境と調和する建築づくりに取り組んでいる。


【著者】

森田 美紀

建築家/mok。1989年生まれ。大阪市立大学大学院生活科学研究科修了後、2015年デンマーク王立アカデミー修士課程修了。2016~21年Space Copenhagen。2023年mokを小林優と共同設立、2024年同日本法人設立。デンマーク建築家協会登録建築士。


金田 泰裕

構造家/yasuhirokaneda STRUCTURE。1984年生まれ。2007年芝浦工業大学建築工学科卒業後、鈴木啓/ASA勤務を経て、2012年渡仏しBollinger + Grohmann Paris勤務。2014年パリにyasuhirokaneda STRUCTUREを設立、2016年香港に移転、2019年コペンハーゲンに移転。世界各地の建築家と協働する。


岡村 彩

ビジネスファシリテーター/Ayanomimi。1983年コペンハーゲン生まれ。2009年コペンハーゲン商科大学大学院卒業後、コンサルティング会社「Ayanomimi」を設立。在学中に慶應義塾大学へ留学。コペンハーゲンを拠点に日本と北欧のポテンシャルを活かした企画の考案とビジネス支援を行う。


宇田川 裕喜

クリエイティブディレクター/BAUM LTD. + BAUM CPH ApS2010年、ブランディングデザインとソーシャルデザインを行うBAUMを創業。2012年米国オレゴン州に進出し現地のデザイン会社と提携。丸の内仲通りの歩行者空間化や地域デザインを前提としたホテルやカフェなどの実績多数。

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