つくって食べる日々の話 / 著者・平松 洋子、円城 塔、春日 武彦、牧野 伊三夫、大平 一枝、ツレヅレ ハナコ、白央 篤司、阿古 真理、滝口 悠生、辻本 力、スズキ ナオ、ほか / Pヴァイン
美味しいエッセイ
エッセイと随筆の違いは何だろうか。随筆は一つのトピックに対して専門性を持ちながら論じていくという向きがあり、エッセイは同じく一つのトピックに対して著者自身の心情の変化などを事細かに描くということらしい。
もうとっくに廃盤になっており、今では古本でしか手に取ることのできない、日本の名随筆というシリーズものの本がある。タイトルでまとめているトピックを表しているのだが、音、コーヒー、道、旅などなど多岐にわたっており、今で言うと昔の人たちが残した文章を共通するテーマで横串に読むことができるので、いつか全てのタイトルを収集したいと思っている。
その中で味というテーマのものを所有しているのだが、どの料理をどんなふうに調理すると美味いだとか、外食した先の店員の礼節についてグダグダと書かれたものとか、多種多様かつ随筆だけあって専門性が所々に散りばめられているので、とても学びが多く面白い。
さてなぜそんな他の本について書いているかというと、本書『つくって食べる日々の話』も同様に、料理と生活を色々な著者に書き下ろしてもらうという種類の内容だったので、ふと先の随筆を思い出したというわけだ。
こちらは建前としてエッセイとしているものの、食の専門性というよりは、それぞれの流儀が感じられるので、そういった意味でその人らしさという専門性を感じ取ることができるだろう。
食べることは生きること、という言葉は誰しもが一度は耳にしたことがあるはずだ。
まさしくそんな一冊。
ぜひそれぞれの味わいを召し上がってみてほしい。
人気小説家や食エッセイの第一人者、ノンフィクションライターなど様々な分野で活躍する16名の表現者による「料理と生活」をテーマにした書き下ろしエッセイ集。
執筆
平松洋子/円城塔/スズキナオ/春日武彦/大平一枝/白央篤司/牧野伊三夫/阿古真理/絶対に終電を逃さない女/辻本力/オカヤイヅミ/島崎森哉/宮崎智之/松永良平/ツレヅレハナコ/滝口悠生
<目次>
はじめに
そこそこおいしい 円城塔
いつもの自分を取り戻すためのつまみ スズキナオ
料理の習得と通過儀礼(老人版) 春日武彦
揺れる台所 大平一枝
喉が鳴り、お腹が空き、心洗われる 白央篤司
画家と台所 牧野伊三夫
それでも料理を好きになれない 絶対に終電を逃さない女
私と料理とこの社会 阿古真理
なんでこんなに楽しいのかよ 辻本力
自炊になるまで オカヤイヅミ
板挟みとしての料理、板挟みとしての事務 島崎森哉
「料理は大事」と人は言う 宮崎智之
つくって食べるレコードの話 松永良平
じぶん弁当 ツレヅレハナコ
湯剥きの手間 滝口悠生
乾きかけのトゲ 平松洋子


