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Coyote No.86 特集 NEVER STOP EXPLORING 冒険の未来

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Coyote No.86 特集 NEVER STOP EXPLORING 冒険の未来 / スイッチ・パブリッシング




そこに行く理由




『冒険』と聞くとイメージとしては、バックパックを背負って雄大な自然に向けて歩みを進め、今まで出会ったことのなかった世界を体験することを頭に思い浮かべる方が多いのでは無いだろうか。そしてそのフィールドは海よりも山をイメージするように思う。

信州・上田に移住をしてそろそろ山に登る必要があるのではないかと思ってきた。先日誕生日を迎えた妻に今年の目標は?と聞けば、「山に登ること」と答えていたし、息子ももう3歳になってちょっとした1時間コースのハイキングくらいならお手の元になってきた。
まずは上田の市民の山として愛されている太郎山あたりだろうか。顔をその方面に見上げれば見ることのできる山として存在するあの太郎山の頂からはどんな風景が広がり、その風景に辿り着くまでの道のりにはどのようなストーリーがあるのだろうか、登頂者という意味での先人は無数といるこの低山、これに挑戦するというささやかな期待といよいよそれが現実に迫ってくる予感に、『冒険』への出発前の少しそわそわした気持ちとなり、またそこに行く理由を探しているのだった。


さらにその気持ちに拍車をかけたのが、本書『Coyote No.86 特集 NEVER STOP EXPLORING 冒険の未来』だ。

鈴木雄大さんというアルパインクライマーがいる。アルパインスタイルというのは、バックパックでアルプスの山を登るようなベーシックなスタイルで少人数のチームで山頂を目指すもの。けれど鈴木さんが行っているのは、僕が挑戦しようとしている低山ではなく、最高峰を目指す歴とした登山家で若き冒険家の一人なのだ。本書はメインの特集として、悠久の自然に抱かれた山に魅了された鈴木雄大さんを通し、アウトドアアクティビティの醍醐味を味わい、その中にある冒険の本質を問うている内容。

実際に現地に行かないと、そして登り始めないと何が立ちはだかっているのか分からないこのクライミングの息遣いや風景描写が文字や写真で丁寧に描かれているので、ページをめくっているうちにあっという間にその世界に引き込まれてしまう。
場合によっては生と死の間に立たされるようなこともある人類としての限界に挑むような冒険の内容に心を奪われると同時に、目的や目標をその場の状況に応じて柔軟に変えて、プロセスを楽しんでいるように感じた。ゴールに囚われず、プロセスにこだわるといった感じだろうか。それはまるで人生のようだとすら思えてしまう。


さらにページを読み進めていくと、石川直樹さんなど過去の賢者たちの大切な冒険譚も掲載されているけれど、やはりそうだ。囚われずにこだわる。

自然に寄り添い、挑み続ける挑戦者たちの生き様に、その手がかりを乞う。

圧倒的な自然の前で人間がいかに小さな存在か、遥かな彼岸に息づく尊い何かを感じた時、野生の世界では人は自然に挑むのではなく寄り添うことで生きていくことができる。

今、私たちの失ったものを考える。

それが冒険の未来でもある。


さて、最後にこの一冊で一番衝撃的だったのが、鈴木雄大さんが高校のサッカー部の後輩だったということだ。本誌のインタビューの中で登頂まで登るのは大変だけれど、高校時代のサッカー部の走りと比べれば…という応対があったが、ピンときてプロフィールを調べれば、ビンゴ!

自分もたまに辛いことがあると、そうしたことを思い浮かべるので、やっぱり時代は違えど、高校の時の走りには長い意味、そして人生における効果みたいなものがあるのだなと痛感するのだった。いや、でもあの時は辛かったな〜。


※本書の中に出てくるエピソードがYOUTUBEでも見ることができるので、そちらと合わせてご覧いただくとより臨場感を持って楽しんでいただけます。

 


Interview

鈴木雄大 冒険

文=寺倉力 写真=鈴木岳美、鈴木雄大

鈴木雄大は、大学山岳部で登山の魅力の虜になり、いくつもの失敗と成功を経て、国内屈指の若手アルパインクライマーへと成長していった。登山との出会いから、ヒマラヤ未踏峰への挑戦、過酷な遠征、そして遭難事故——。彼の半生と山への挑戦の軌跡をたどりながら、「人はなぜ冒険に惹かれるのか」という冒険家の永遠の問いへと迫る約1万字ロングインタビュー。



Travelogue

心に刻まれた旅

文と写真=鈴木雄大

「知らない世界を見てみたい」。そんな欲求に突き動かされ、世界を股にかけて冒険的なアルパインクライミングをしてきた鈴木雄大。鈴木にとって未踏の山を求めることは何ものにも代え難い旅であり、旅先にはいつも、運命的な出逢いがあった。かけがえのない記憶を鈴木自身が綴ったトラベローグを掲載。



鈴木雄大 人はなぜ登るのか

絵=成瀬洋平

若きクライマー・鈴木雄大はいかにして生成されていったのか。彼を冒険へと駆り立てる10の断想。



鈴木雄大 7つの冒険

構成=Coyote編集部 写真=鈴木雄大

オールラウンドに活動する若手アルパインクライマーの旗手、鈴木雄大はこれまで国内外でどんな冒険を繰り広げてきたのか。本人の手記をもとに、特筆すべき7つの冒険を振り返る。



EXPEDITION STORIES

構成=奥田祐也

THE NORTH FACEアスリートたちはどのような冒険を繰り広げてきたのだろう。4人のアスリートの特別な冒険をダイジェストでご紹介。

◎写真家 石川直樹

◎登山家 ベンジャミン・ヴェドリン

◎プロスノーボーダー 中川伸也

◎トレイルランナー 土井陵



Interview

ジャクソン・マーヴェル “怪峰”ジャヌーへ

文=寺倉力 翻訳=中嶋渉

2023年に世界屈指の難壁・ジャヌー北壁を、仲間とともにアルパインスタイルで登攀した、アメリカ人クライマーのジャクソン・マーヴェル。20年近く再登者が現れなかった難壁を、誰もが不可能視していたアルパインスタイルで完登するという偉業は、どのように成し遂げられたのか。その核心に迫るインタビュー。



THE NORTH FACE

SUMMIT SERIES 2025

頂点を目指すために

文=寺倉力 写真=ただ

今年25周年を迎えたTHE NORTH FACEの最高峰ライン「サミットシリーズ」の最新プロダクトをご紹介。頂を目指す者のために生まれた「サミットシリーズ」には、過酷な自然環境のもとで安全かつ快適に行動するため最先端の素材とテクノロジーが惜しみなく投入されている。さらにアスリートたちの厳しい欲求に応える、その緻密なディティールには長年にわたる山岳ウェア&ギアづくりで培ってきた経験が息づいている。



池澤夏樹 ラハイナの大火

あるいは小さなハワイイ紀行

写真=岩根愛

かつて『ハワイイ紀行』の取材で足繁く通ったハワイを、作家池澤夏樹が再訪する。2023年8月8日に起こった大火で、ほぼ焼失したマウイ島のラハイナの町。そこでは実際に何が起こったのか、人々は今何を考えているのか、復興の計画はあるのか——。現在のラハイナの光景や人々の様子を綴りながら、その背景に潜む歴史にも迫るトラベローグ。



<そのほかのコンテンツ>

●Travelogue

風炎の谷

ピレネー、オルデサ渓谷を行く

写真=阿部稔哉 文=北澤宏明

●Interview

足元に広がる宇宙

——TOKYO BUG BOYSが見つめる自然の未来

写真=TOKYO BUG BOYS 文=Coyote編集部

●Foxfire True to nature Vol.20

仁科斎


●最初の一歩 第86回

黒田征太郎

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