うまっ / 著者・原太一 / HeHe
お客様と食を繋ぐもの
小商を営むものにとっては、やはりお客様との関係性抜きには語ることはできない。もちろん何かを購入してくださってくれることはとても嬉しいことなのだが、それ以上にフラッと顔を出してくれて、少しばかりの世間話や情報交換。そういう類の雑談ほど嬉しいことはない。他のお店の事情は知る由もないのだけれど、おかげさまでウチのお店のお客様は特にその個性が色濃く出ているようで、わたしたちはお店の中から一歩も外に出ていないはずなのに、色々な場所からそして様々なバックブランドを持ったお客様とお話をすることで、一日の営業を終える頃には、一つのエリアを旅したくらいの情報量が自分の中におさまり、ホクホクした感覚で店を後にするのだ。目先の利益云々ということではなく、こうしたホクホクした状態や状況をどれだけ作れるのかということが、わたしたちの日々の活力になっているという事実はとても嬉しいものなのだ。
さて、なぜそんなことを言っているのかというと、本書『うまっ』には、こうしたお店とお客様との関係性がとても丁寧に描かれているのだ。多国籍料理店「LIKE」(東京・白金台)の歴代人気メニューのレシピと、「LIKE」の旗の下に集結した多数の執筆者により、料理+Something(何か)=「うまっ!」を探究し、まるごと味わうためのレシピ&エッセイ集である本書。ただのレシピ本というわけでなく、この「LIKE」に集う錚々たる面子のお客様たちが食にまつわるエッセイを寄稿しているのが本書の最大のユニークさとなる。
店主やシェフが自分語りのようにまとめたレシピではなく、自分ではない誰かに語らせるというこの編集スタイルこそ、「うまっ」と唸りたくなるようなものなのだ。こうしたお客様とお店が地に足ついた形で繋がりあっているということこそ、今のご時世に実店舗を構えるということの意味や価値になってくるのではないだろうか。
「LIKE」の定番メニューのレシピを34品掲載。
それは原さん自身の思い出とともに綴られる日記のよう。
各界きっての表現者が「うまっ!」を探究したエッセイでさらにその説得力が増す。
読んで、見て、作って、食べて、大満足の一冊。
ご賞味あれ!
●執筆者 20名
宮沢りえ (俳優)
田根 剛 (建築家)
チョウ・ジェリー (IT企業勤務)
ミヤギ フトシ (アーティスト)
菊地成孔 (音楽家、文筆家、音楽講師)
操上和美 (写真家)
平林奈緒美 (アートディレクター)
丸山智博 (料理人)
森田 剛 (俳優)
山野アンダーソン陽子 (ガラス作家)
内田也哉子 (エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションなど)
金川晋吾 (写真家)
コナン・モカシン (ミュージシャン)
飯豊まりえ (俳優、モデル)
山口 亮 (ファッションデザイナー)
角田光代 (作家)
エドストローム淑子 (ディレクター)
コムアイ (アーティスト)
アオイヤマダ (ダンサー、俳優)
平野紗季子 (エッセイスト、フードディレクター)
●レシピ 34品
蛤と青菜炒め/海老とライムの塩焼きそば/水餃子/ラクサのスープ/ラー油/
自家製甘酒のスープとピーナッツ餡入り白玉スープ/ゴーヤーとモロヘイヤの冷やし素麺/
白キムチ/大根のピクルス/油淋鶏/大根とセロリのスープ/春菊と玉ねぎのサラダ/ワカモレ/
フムス/甜醤油/鶏胸肉の中国粥/花椒油・青山椒油/チコリ、梅、干し海老のサラダ/
クコの実のヌガーグラッセ/麻婆豆腐/青山椒イカそうめん/牡蠣醬/鶏ガラスープ/
白菜と豆乳のスープ/明太子茶碗蒸し/インゲンの牡蠣醬炒め/ハムスイコー/
真鯛のレモングラス蒸籠蒸し/アロス・チャウファ/ゴビ・マンチュリアン/ラグマン/
シェズワン・エッグプラント/ナツメのプリン/豆花





