空気感(アトモスフェア) / 著者・ペーター・ツムトア、訳・鈴木仁子 / みすず書房
スイスの建築家としても知られるペーター・ツムトア。
彼の建築哲学の『空気感(アトモスフェア)』を丁寧に解説してくれている一冊です。
この『空気感(アトモスフェア)』というものは、読んで字の如く、人が感じとる感覚のことなので言語化することは容易ではないことはご理解いただけるとかと思います。
けれど建築やモノを語る上で、『空気感(アトモスフェア)』や『雰囲気』というものは、それと対峙する人の情緒に訴えかけ、感じ取るという行為は人間の本能だとも氏は語ります。
曖昧で形に見えず、けれどとても大切な『空気感(アトモスフェア)』をペーター・ツムトアは12個の要素としてそれを説明しています。
建築の身体
素材の響き合い
空間の響き
空間の温度
私のまわりの物たち
冷静と誘惑のはざま
内と外の緊張関係
親密さの諸段階
物に射す光
環境としての建築
整合性
美しい姿
それぞれの項目ごとに彼の考えがまとまっているのですが、所々に出てくる例えとしての音楽や映画、そして絵画など小さい物から大きい物まで視点を行き来させながら思考しているということが伺えます。
彼自身が、家具職人の父を持ちその見習いからキャリアをスタートさせていることからも影響があるのでしょう。
本の装丁もスタイリッシュでシンプルですが、手触り感がある世界観が表現されています。
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ペーター・ツムトアは
その建物がなんのために使われるのか、という問いから出発する。
そこで何が起こるだろう?! と。
根底にあるものに、彼はどんな建築家よりも心をくだく。
見つめ抜き、問いを深めようとする。
――ヴィム・ヴェンダース(映画監督)
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Peter Zumthor
1943年スイス、バーゼルに、家具職人の息子として生まれる。父の元で家具職人の修業後、バーゼルの工芸学校(Kunstgewerbeschule Basel)とニューヨークのプラット・インスティテュート(Pratt Institute)で建築とインダストリアルデザインを学ぶ。その後10年間、スイス、グラウビュンデン州で史跡保護の仕事に携わる。1978年よりハルデンシュタインにアトリエを構える。ハルデンシュタイン在住。
主要建築:ローマ遺跡発掘シェルター(1986); 聖ベネディクト礼拝堂(1988); グガルン・ハウス(1994); テルメ・ヴァルス(1996); ブレゲンツ美術館(1997); スイス・サウンドボックス (ハノーファー万博2000 スイス・パビリオン); コルンバ美術館(2007); ブルーダー・クラウス野外礼拝堂(2007);魔女裁判の犠牲者たちのためのスタイルネーセ記念館(2011); サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン 2011; ヴェルクラウム工芸会館(2013)