アトリエ雑記 / 著者 牧野伊三夫 / 本の雑誌社
広告制作会社を経て画家になり、「暮しの手帖」「雲のうえ」や同人「四月と十月」で活躍する牧野伊三夫さんの日々の生活の記録。
日刊ゲンダイ連載の「日雇い絵描きの愉しみ」を中心に再編集したエッセイが牧野さんの挿絵を交えながら味のある“オヤジ論”としてまとめられています。
この連載タイトルにも使われている「愉しみ」という言葉は、エッセイの中でもたびたび登場します。改めて読み方が同じ「楽しみ」との違いは何だろうか、と思い調べてみると、よく使う「楽しみ」の方は『与えられたこと(物理的に)に対して楽しく過ごすこと』を意味し、牧野さんが使っている「愉しみ」はというと『自分自身の気持ち、思いから感じ生まれるたのしい状態』のことを言うそうで、それは自分自身の心の在り方や考え方でいくらでも変わるという意味が含まれています。
名の知れた画家なので様々な方たちとの交流や人脈がありそうな牧野さんですが、エッセイを読み進めていると一人で思っていることが多く、そこで考えていること、思考する中で生まれる自分の中の小さな企みと見立てが丁寧に描写されています。
華麗なる生活エッセイではなく、質素(本質的な質感やクオリティが高い状態)な中での「愉しみ」方が牧野さん節で語られています。
この一冊にまとまっている行間から漂う哀愁を感じるともに、あなた自身の「愉しむ」ということを考えてみてください。
【目次】
〈絵の話〉
雑木林の景色
黒い土
上野でのスケッチ
盛岡
ロバの本屋
焼き絵
夢のスケッチ
妻の夢
寒い日のスケッチ
門限
猪
メロンパン
酔っぱらいのコルセット
はじめての画集
山口薫の詩
画家の副業
〈想い出、友人のこと〉
かき揚げ
武蔵野の冬
雪かき
朝の散歩
番犬
卓袱台の竹馬
雹が降った日のこと
失格
くるみ割り人形
物干し竿
軽井沢
カルデラ
喫茶
階段室
二つの丸い円
板ばさみ
演奏会のチラシ
MRI
るみちゃん
ゆにさんのこと
赤井さん
諺
〈酒〉
酒場の景色
北海道取材
アン・ヴァン・ルージュ
居酒屋の常連
煙草のけむり
台風
打ち合わせ
腹巻おじさん
振り子
そば屋へ
巣鴨のやきとり屋
夜道
クジラの町で
下諏訪
蟲さん
小倉案内
若松
〈アトリエ料理帖〉
絵と料理
野菜と豆のスープ
小さい鍋
日田の竹の子
祖母のビーフン
ぬか床
白菜の餡かけ汁
野草
キャベツ選び
魚肉ソーセージのナポリタン
鶏むね肉料理三つ