建築は詩: 建築家吉村順三のことば100 / 編集・吉村順三建築展実行委員会 / 彰国社
気持ちのよい、風景
色々な場所を旅していると国内外問わず、気持ちのいい空気、風景を感じることがあります。ある時はイタリアのフィレンツェの丘、またある時はスウェーデンのストックホルムのSOFOエリアの一角の木漏れ日。そしてまたある時は浅間山の麓の傾斜にかけてかたまっている集落など。
共通しているのはどこの場所でもそこに住む人々が忙しなく、でも忙しすぎずに自分たちの生活を勤しんでいる姿がそこにあるということなのではないのでしょうか。
人々が生活する上で欠かすことのできないものとしてあげられるのは、衣食住の3つだと思います。景観ということで考えてみれば住にあたる建物は、風景を作るためには必要なものになってきます。
本書『建築は詩: 建築家吉村順三のことば100』は。不世出の名建築家吉村順三がさまざまな媒体で語ってきた言葉を編纂する形でまとめられた一冊です。吉村順三の建築をビジュアルで観ずとも、ここにまとめられた言葉を辿ってみれば、氏が建築、いや生活で大事にしている視点が形として伝わってくるはずです。
ただ住まうことができればいいわけではありません。
そこでどんな所作が生まれ、そしてその家々が連なることでどんな風景が生まれるか。
気持ちのよい、風景へ。
そんなヒントがまとめられています。
<目次>
はじめに
すまい 生活と人の感情
住宅が基本/家の形/住宅の基本形/ヒューマンスケール/よい住宅/住宅の広さ/単純な部屋/八畳/天井高/居心地のいい広さ/家のセンター/シンプルな形/床のレベル/日本の庭/部屋のあかり/主婦のコーナー/日本の家/住まいの教育/責任のある自由さ/家具/寸法にあらわす
火と水と植物 光と音楽
水と火/光と火/欲しいのは光/燃える火/火の身になって/一鉢の花/楽器がある/音楽/人間の喜びのために/パターン/天地のリズム
まち・都市
環境/町のキャラクター/町づくり/軒の出/ヒューマンな町/街並み/向こう3軒両隣り/風景を感じて/自動車
伝統と近代化
近代化/昔の人の知恵/土地に生まれたもの/素直さ/能/日本の気持/建築の美しさ/民家/生活環境/座ぶとん/日本の色彩/伝統的なもの/近代建築/昔の人のあかり/禅/建築は詩/人間の直感/品
建築
日本建築の特色/自由な交流/純粋さ/誠実さ/設計理念/日本の屋根/釣り合い/グリッド/ディテール/簡単な形/原寸/経済性/設備/材料/日本人の知恵/生活する/建築の批評/心の豊かさ
建築家
建築設計という仕事/住む人の立場/デザインの基本/地震/現寸/建築の仕事/建築家の社会的責任/いい形/デザインの持ち駒/設計というもの/よい空間/いいうち/将来の変化/一本の線/日本の性格/ヒューマンなもの/楽譜を見ながら/手を動かして/旅をする/寸法に責任を持つ/共同して/将来の洞察
あとがきにかえて
住宅から宮殿まで