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モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと

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モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと / 著者・奥野克巳 / 亜紀書房



アニミズムという世界




実店舗の隣にある、戦後から続けているお寿司屋さん・萬寿さんとご近所づきあいをするようになって早4年が経とうとしている。ウチの子と6歳ほど歳が離れたお子さんがいらっしゃるので、いらなくなったおもちゃや履かなくなった靴などのお下がりをいただいたり、それぞれの畑で採れた野菜を交換しあったりできるのは、ただのご近所づきあい以上の共助、いや共生の感覚がそこには確かに有るのだった。

そんな中、先日ぬいぐるみのお下がりをいただいた。息子はとても喜び、「今日はこれと一緒に寝る」と言って肌身離さずギュッと抱きしめていた。翌朝になってもその状態が続くものだから、保育園に出発するのも一苦労。何とか家に置いておくように説得したものの、どうやら彼の中で後ろ髪を引かれるものがあるようで、最後出発前に「じゃあね、保育園行ってくるから、おウチで待ってるんだよ」と話かけているのが何とも微笑ましかったのだ。

こういった経験は、我が子に限らず誰しもが子どもの時にはやってきたことのように思う。人間ではない何かを擬人化させて、あたかもそこにいのちがあるかのように接する。私たちは頭で考えはじめてしまう以前に、そうした五感で感じた何かをこの世のあらゆる物事の中に見出す能力が兼ね備えられているのかもしれない。


さて本書『モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと』を読み始めると、そうしたことがあながち間違ってないのだと感じることができるはずです。

現在「原初の人間の心性」として過去のものとされてきたアニミズムやその性質にフォーカスを当て、片づけコンサルタント『こんまり』やジブリの『風の谷のナウシカ』を例にとり、いのちが無いとされているものに対する姿勢を人類学者の視点でまとめているこの一冊。

アニミズムとは、地球や宇宙における存在者のうち、人間だけが必ずしも主人なのではないという考え方だとすれば、自分との対話を目指すのは、人間のことだけしか考えていないという意味で、真のアニミズムとは呼べないのではないか、と本書は出発します。

アニミズムには、人間の精神を豊かにするヒントが隠されているのではないか。
文学、哲学の大胆な解釈とフィールド経験を縦横に織り合わせて、「人間的なるもの」の外へと通じるアニミズムの沃野を探検していきます。


人間が世界の「主人」をやめた時、動物、モノ、死者との対話がはじまる。

そんなきっかけの一冊です。




<目次>

1.こんまりは、片づけの谷のナウシカなのか?

2.風の谷のアニミズム

3.川上弘美と〈メビウスの帯〉

4.壁と連絡通路——アニミズムをめぐる二つの態度

5.往って還ってこい、生きものたちよ

6.東洋的な見方からアニミズムを考える

7.宮沢賢治を真剣に受け取る

8.まどろむカミの夢——ユングからアニミズムへ

9.純粋記憶と死者の魂——ベルクソンとアニミズム

10.記号論アニミズム——エドゥアルド・コーンの思考の森へ

11.人間であるのことの最果て——語りえぬものの純粋経験

12.人間にだけ閉じた世界にアニミズムはない

あとがき

参考文献




奥野 克巳
1962年生まれ。立教大学異文化コミュニケーション学部教授。

20歳でメキシコ・シエラマドレ山脈先住民テペワノの村に滞在し、バングラデシュで上座部仏教の僧となり、トルコのクルディスタンを旅し、インドネシアを1年間経巡った後に文化人類学を専攻。

1994~95年に東南アジア・ボルネオ島焼畑民カリスのシャーマニズムと呪術の調査研究、2006年以降、同島の狩猟民プナンとともに研究している。

著作に、『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(2018年、亜紀書房)など多数。

共訳書に、エドゥアルド・コーン著『森は考える―人間的なるものを超えた人類学』(2016年、亜紀書房)、レーン・ウィラースレフ著『ソウル・ハンターズ―シベリア・ユカギールのアニミズムの人類』(2018年、亜紀書房)、ティム・インゴルド著『人類学とは何か』(2000年、亜紀書房)

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