新百姓 001 / 編集長・おぼけん、発酵人・施依依 / 一般社団法人新百姓
生きるための水
『うわ〜冷たい!』
幼少期に毎年、祖父母の家のある信州・上田に帰省してからまず姉と一緒に洗面所の蛇口を捻って手を洗った時にいつも2人してこう叫んでいました。そして手洗いうがいもそこそこ、うがいで使ったコップいっぱいにお水を入れてそれをゴクゴクと一気飲み。幼心にこんなに美味しい水を毎日飲めるなんて最高だなと、それだけで帰省した楽しみを満喫している自分に気がつくのでした。
なぜこんな水の思い出を語ったのかというと、本書『新百姓 001』のテーマが「水をのむ」だからです。
新百姓とは膨大な生命の連鎖の中で、生かされていることに感謝しながら、つくる喜びを大切にするヒト、その様。日々の衣食住から科学技術、芸術、物語の創造行為を楽しむ。最先端のテクノロジーやシステムにも盲目的に依存するのではなく、積極的に学び、道具として活用する。
創刊号の冒頭に『新百姓』の定義にはこう書かれています。
効率性、合理性、再現性など今の資本主義社会や世の中全般に“当たり前”や“普通”とされていることに限界がきていることは、誰の目にも明らかになってきている今日この頃ですが、このインディペンデントマガジン『新百姓』は毎号一つのテーマを様々な視点から編集し、どうすれば既存のシステムの支配や依存から解放されるかということについてまとめられています。
真っ向から既存の資本主義などの今の価値観を否定するわけでもなく、「こっちの選択肢」もあるよと提示してくれているトーンが心地よいです。
そして今号のテーマの「水をのむ」。人間が生きていくために必ず必要な水。これらを文化人類学から最新のテック、さらには名のしれない一家の取り組みまでがまとめられています。掲載されているインタビューの共通する課題点として「水が足りない」と思ってしまっているということ。確かに普段、口にするような殺菌されたいわゆる”きれい”な水というのは日本では当たり前のような感じに使っていますが、世界に目を向けてみると簡単には手に入りませんが、そもそもそれらを自分で『つくる』という『創造してみる』という考えには至っておらず、本書を一冊通して読んでみるといずれ一人一人が自ら水を創っていく日も近いのでは?と思わずにはいられないはずです。
今まで当たり前すぎて思考停止してしまっていた『水』に対してのこと。
きっとこの一冊があなたの創造するスイッチを押してくれることでしょう。
そして今号の発酵部数は6966部限定となっております。
一冊一冊の裏面にシリアルナンバーが刻印してあります。
一冊一冊がとても手触り感のあるものになっていきそうです。
新しい視点で行動していきたい方に手に取っていただきたい一冊です。
<目次>
002 創刊によせて 中沢新一
006 Chapter1 新百姓宣言
027 Chapter1 新百姓的考現学
028 どうすれば都市をもっと自由に遊べるか?
フラワーチャリ
036 システムの中でどうすれば冒険を楽しめるか?
[インタビュー] 関野吉晴さん
052 ハッキンチェア
056 制服女史
063 Chapter2 特集 水をのむ
1) 文明と物語の視点から
076 そもそも人間にとって「水をのむ」って何?
[インタビュー] 中沢新一さん
090 「水をのむ」の始まりって?
[探求者へのQ&A] 山極壽一さん
092 人類と「水をのむ」のコンンテキスト
094 「水をのむ」と身体メカニズム
096 サイズ別 地球型生命系にとっての「水」の役割
2) デザインと科学の視点から
108 どうすれば誰もが「水をのむ」で
遊べる未来をつくれるか?
[インタビュー] 川北力さん
122 どうすれば自分たちで
「水をのむ」の仕組みをつくれるか?
[インタビュー] ヘンリー・グロガウさん
205 Chapter3 新百姓の見方
206 人間の創造性を解放する『建築』って?
[寄稿] 連勇太朗さん
208 23世紀の昔話|アリとキリギリス
212 YABABON [001号参考図書]
234 「あなたは間違っていない」001号 編集後記にかえて
236 ヨハクの付録
244 写真解説