野生のおくりもの / 著者・早川ユミ / アノニマ・スタジオ
暮らすことは野生の感覚を取り戻すこと
『縄文人だったら、どう考えるか。』
こんなことを日常で考えてみたことはありますか?仕事やなにかで、あの先輩だったらどう考えるかなとかはあるかと思いますが、縄文人だったらとはなかなかないのではないかと思います。
本書は、高知の山のてっぺんで小さな自給自足を営む布作家の早川ユミさんが綴る『野生』という切り口で生活を考えているエッセイ集です。
章の最初は生命を育む『土』からスタートし、石、根(木)、火、水、日(太陽)、命と続き、これらの自然から連想されてる著者のエピソードから、それらの自然の記憶に耳を傾けていきます。
根本的に人が豊かに生きていくということはどういったことなのでしょうか。
この問いに対する明確な答えは、きっとないのでしょうが、改めて考えさせられる一冊になっているかと思います。
野生の感覚を取り戻してみてはいかがでしょうか。
<目次>
はじめに
◆1章 はじまりの土
土から生まれるもの、パナリ焼き/土に還る―鯉江良二さんの作品/思想する布たち―ガンジー/野生のほうへ―アリシア・ベイ・ローレル/土の人―—テッペイのしごと
◆2章 わたしにも、石がひつよう。
縄文人のおおきな石たち/チベットのココシリ草原/沖縄の厨子がめ/石がもたらすよりどころ/おくりものの循環
◆3章 根っこのある木たち
おしらさま/沖縄のノロ、ユタ、ツカサ/ひとがひとをとりもどす、森/森を生きるケモノたち/聖なる樹をもつ―山尾三省さん/思想する森―福岡正信さん/ニューヨークにギャラリーをつくる—山崎ナナさん
◆4章 火のもつちから
未開なものたち、縄文土器/火の神さま/鉄をうつ、土佐鍛冶のかま/土鍋でごはんを炊く/まきの窯たき、火という野生
◆5章 めぐる水、水のふしぎ、聖なる水
山の神さま、雨乞いのお祈り/へびの神さま、マムシ/川とひとつになる/水のように流れ、木のように根をはる/水の虹、谷の虹/水のような人―ランディさん
◆6章 太陽の女たち
母なるひとのかたち、土偶/母なる大地/太陽のちから/原初生命体としてのからだ/月のこよみ/日本みつばちの世界の母性/太陽のひかり―きこさんの子育て/教育の自給自足/わたしの子育て
◆7章 生命力あふれるものたち
縄文人のたべもの、里いもと山栗/物部村のシャーマニズム、いざなぎ流/気のあふれるたべもの、梅干し/沖縄の森、うたき/アイヌの物語をめぐる野生/にわとりを飼う、たべる/いのちをつなぐ―京都「なやカフェ」のゆうき君/発酵するもの―鎌倉「パラダイスアレイ」のジュンペイ君
◆8章 リズムは野生
ことばの森へ—友部正人さん/いのちのリズム/ぼくらの未開への旅/ほとばしる野生―ミロコマチコさん/野の花のように―‐青葉市子さん/わたしのリズム、ちくちくしごと
◆女の対談―「ランディさんと『野生』を語る」
野生をまなぶ本たち(出てきた本や参考文献)
早川ユミ
1957年、愛知県出身。布作家。アジアの手紡ぎ、手織布、藍、黒檀の実、ラックなど草木染め、泥染めの布、山岳少数民族の布、柿渋染めの布、リトアニア麻布でちくちく手縫いして、衣服をつくり、あちらこちらで展覧会をひらいている。夫である、陶芸家の小野哲平の窯たきを手伝ったり、種をまいたり、木を植える。アジアの布を探して、家族で旅する。『種まきノート』、『種まきびとのものつくり』、 『種まきびとの台所』、『旅する種まきびと』(アノニマ・スタジオ)、新刊に『ちいさなくらしの たねレシピ』(PHP研究所)がある。