画文でわかる モダニズム建築とは何か / 著者・藤森照信、イラスト・宮沢洋 / 彰国社
建築史の“アメ玉”説
本書はモダニズム建築がどのような系譜から現在に至っているのかということについて建築史家の藤森照信さんが内容を、画文家の宮沢洋さんがイラストを担当し、とてもわかりやすくまとめられています。
そもそもモダニズム建築、つまり近代建築は、機能的、合理的な造形理念に基づく建築で、産業革命以降の工業化社会を背景として19世紀末から新しい建築を求めるさまざまな試行錯誤が各国で行なわれてきて、最終的に今から100年前の1920年代に機能主義、合理主義の建築として成立しました。
それまでのアールヌーボー調の19世紀以前の様式建築を否定し、工業生産による材料(鉄・コンクリート、ガラス)を用いて、それらの材料に特有の構造、表現をもつ建築などが生まれていきました。
一度はアールヌーボーやバウハウスなどといった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それらの内容や流れがイラストでまとめられているのでどうしてそのようなある種のムーブメントが起こったのかということを感覚的に理解しやすいかと思います。
今は鉄・コンクリート・ガラスの3つの素材を使った建築が世界中で多様されていますが、過去に遡ると木・土・石といったような素材を世界中で使用されていました。それらの素材や形状が多様になって現在のように収斂されていく様子を藤森さんはアメ玉の袋に例えて表現されています。
この一冊を読んだ後に、有名建築を見ればまた違う角度から建築を楽しめそうです。
はじめに 宮沢洋
第1章 歴史主義建築はなぜ消えたのか
第2章 モダニズムと日本の伝統
第3章 人間の造形感覚
第4章 振り出しに戻った人類の建築
補講1 大宗教時代の建築を考える:中国や日本の寺はなぜ横長になってしまったのか
補講2 藤森照信塾長に聞く:「神は死んだ」からの「原点ゼロ」
おわりに 藤森照信
藤森照信
建築史家・建築家、東京大学名誉教授、東京都江戸東京博物館館長。1946年、長野県生まれ。1971年、東北大学工学部建築学科卒業。1978年、東京大学建築学専攻博士課程修了。専門は近代建築、都市計画史。主な著書=『明治の東京計画』(毎日出版文化賞、岩波現代文庫)、『建築探偵の冒険・東京篇』(サントリー学芸賞、ちくま文庫)ほか。主な建築作品=「熊本県立農業大学校学生寮」(日本建築学会賞“作品”)「ラコリーナ近江八幡 草屋根」(日本芸術院賞)ほか
宮沢洋
画文家、編集者、BUNGA NET代表兼編集長。1967年、東京都生まれ。1990年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。『日経アーキテクチュア』編集部に配属。2016~19年、同誌編集長。2020年、磯達雄とOffice Bunga共同主宰。2021年、株式会社ブンガネット設立。