民藝とは何か / 著者・柳宗悦 / 講談社
ものをどう見るか
先日、面影 book&craftで開催した『播種』自由と自然に生きるブックフェアの関連でポッドキャスト『面影飛行』で、面影 book&craftに長らく通ってくださっている木工作家の中沢学さんにゲスト出演していただいた。詳しい話の内容はぜひ公開しているポッドキャストに譲るとして、とてもユニークで興味深かったのが、中沢さんのものを見る視点だった。その影響について聞くと、柳宗悦らが中心に活動していた民藝運動やその周辺の方たちのものの見方やそれらの思想がまとめられた書籍の言葉から特に影響を受けているようだった。
そうして手にした本書『民藝とは何か』。著者は民藝運動の中心人物の柳宗悦。
民家、民具、民画、民器……日常生活の中にある「下手(げて)の美」の発見、とあるが、柳の思想の中には社会という全体性におもねることなく、その社会や時代の中で生活者が必要として生み出された美しいものはなんなのかということが、本書の縦軸としてしっかりと胸に刻まれるような思いに至った。
「民藝」とは、民衆が日常に使う工藝品である。民家、民具、民画を総称して「民藝」と呼ぶ。「民藝品たること」と「美しく作りたること」には、固い結縁があり、質素こそが慕わしい徳である。このように清貧の美を説いた筆者の理念とは?昭和の初頭に創始され、現在にまで受けつがれる「民藝運動」の精髄を知るための格好の入門書。
柳宗悦が今生きていたら、今の時代をどうみているのだろうか。
そんなことも本書を読んでいると頭をよぎるのだった。
<目次>
民藝とは何か
第1篇 なぜ民藝に心を惹かれているか
1.民藝とはいかなる意味か
2.何故特に民藝が論ぜられねばならぬか
3.誰が民藝の美を最初に認めたか
4.私達は民藝の美に盲目であっていいか
5.何故私達に民藝の美が認識されるに至ったか
第2篇 民藝から何を私が学び得たか
1.民藝の美はいかなる世界を示しているか
2.誰の手から民藝の美が生れたか
3.民藝の美は何故健全なるか
4.安い民藝が何故美しくなるか
5.正しい民藝はいかなる社会から起ったか
美の国と民藝
日本民藝館について
民藝の性質
挿絵小註
Nature of Folk-crafts(英文)
柳宗悦
1889年生まれ。東京帝国大学哲学科卒。宗教哲学者、民藝運動の創始者。学習院高等科在学中「白樺」同人。日本民藝館初代館長。「工藝」創刊。1961年没