パリの菜食生活―ふだんづかいのヴィーガン・レシピ / 著者・室田HAAS万央里 / 青幻舎
ヴィーガンをもっと自由に、美味しく楽しく
ヴィーガン=卵や乳製品を含む動物性食品を口にしない「完全菜食主義者」。
こう書くとなんとなく厳格なイメージがしますが、本書の著者である室田HAAS万央里さんは、完璧なヴィーガンにならなくていいから、まずは動物性食品を食べない、という体験をしてみること、そのうえで、自分と折り合いがつけられる範囲でヴィーガンを続けていく人が増えればそれが肉や魚の消費量を減らすことにつながるのでは、と言います。
私たちが動物性食品を食べることで生まれる動物たちの犠牲について、本書では「卵とマヨネーズの話」のコラムで少し触れられていますが、ヴィーガンと食肉産業の実情や環境問題は切っても切り離せないし、そしてそれは他人事ではないのだ、とハッとさせられるコラムでした。
生きとし生けるものに対して、どれだけ謙虚でいられているだろうか。
自分がよければそれでいい、と傲慢になっていないか。
「自然と寄り添う暮らし」を実践したいならば、私は謙虚であることを忘れてはいけないな、とちょうど今年実感していました。
本書を読んで、まずは週1回ヴィーガンにしてみよう。
精進出汁をとって、レシピにあるお料理を作ってみよう、できる範囲で、できるところから。
少しずつ調味料作りにチャレンジしたり…、そうやってヴィーガンのレパートリーが自然に増えていったらいいな、と個人的に思いました。
食べ方は生き方につながる。
真面目すぎるかもしれませんが、大事なところは真面目に、そして美味しく、楽しく感謝の気持ちで食卓を囲めたら、それが心豊かな暮らしにつながると思うのです。
そんな気づきのきっかけとなる一冊。
ヴィーガンに興味がある方、だけでなく、暮らしにきちんと向き合いたい方にもおすすめです。
<目次>
第1章 いつも冷蔵庫にあるもの
第2章 我が家のおかず
第3章 思い立ったら炭水化物
第4章 適当粉もの生活
第5章 お弁当一週間
室田HAAS万央里
東京生まれ。17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て2003年に渡仏。モード界で働いた後、ケータリング業に転身、料理教室や出張料理をパリで行う。現在は主にオンラインでのヴィーガン料理教室、企業へのレシピコンサルティングなどを手がける。ハム好きな4歳の娘、ほぼベジタリアンな夫と暮らしながら「みんなが喜ぶヴィーガン料理」をInstagram@maorimurotaで発信している。2019~2021年、朝日新聞デジタル&Wで「パリの外国ごはん そのあとで。」を連載