途上の旅 / 著者・若菜晃子 / アノニマ・スタジオ
登山の専門出版社の編集者を経て、文筆家として活躍する若菜晃子さんの旅の随筆集で、1つのお話が短く5〜10分あれば読み終わるので、夜眠る前にベッドの中で、ちょっとしたすき間時間で…、気楽に少しずつ読みすすめられるのも本書のいいところ。
読書が苦手でも旅が好き、という方にもおすすめです。
旅先はカナダやモロッコ、ネパール、チリなど。
「その初めて見る地上の片隅に身を置いて、黙って目の前の自然と相対しているときが、私にとっていちばん幸福なときに感じる。そこには、そこに行くことでしか見られない風景があり、触れられないものがあり、感じられない空気があり、知ることのできないことがある。そこに行かなければ絶対に得られないなにかがある。」 (―2Pはじめにより抜粋)
私も、旅に出るとその土地の空気を味わうことが一番の旅の醍醐味だと感じていたので、上記引用の文章にとても共感を覚えました。 若菜さんの文章は、そういったその土地の自然や街の気配を細やかに描写し、読む人の感情や記憶を静かにかき立てるような味わいがあります。
旅先で、暮らすように旅をすることが好きな方に。
<目次>
はじめに
機上より
◆旅の朝
素焼きのカップ/昨夜のトランペット/オマロスのはちみつ/霧雨の朝/オアオの声/花屋のあかり/スイレンのあした/柳絮の別れ
◆邂逅のクレタ島
クレタ島のハト/クレタ島のヤギ
◆カナダ、ささやく湖
青い鳥/ダリエン岬/ケムクーの道/道の途上/チャッピーの訪問/サスカツーンパイ/タムラックがよい/ビジービーバー/おじさんの湿原/さらばD-7
◆自然の姿
地球の形成/春の林/ヘルンリ小屋/竹の水/サボテンおじさん/モモの宇宙
◆モロッコの壺
地の果て/夜中のアトラス越え/イーネー/フェズの壺
◆インドで石拾い
路上の石/砂漠の石
◆アタカマ砂漠の旅
-砂漠にて
ナスカの地上絵/アタカマの八ヶ岳/人はパンのみに/トラック野郎/砂漠の虫/Mr.Been/グアナコ道/花園にて/フレイリーナの壺
-街にて
町の砂漠/岩盤事故切手/折り畳みパン/卵のおばさん/バジェナールの犬/教会の大道芸人/サンティアゴの紀伊國屋/ディオールおばさん/裸族/置いてきた石
◆生きものたちの地上
ケニアでゾウを見た話/ゾウのチョビー/ゾウの骨/クジャクの羽/ツバメの空/蝶の里
◆ネパールの音
光の交信/バス停の似顔絵師/車掌の合図/ガンドルンの雹/クロのパン屋/イエスタデイワンスモア/石のチョータラ/祖母のラジオ/魚辰の夢/夜明けのプーンヒル/はためくタルチョー/ヤクのチーズ/荷揚げのポーター/ラバの鈴/サランギの音色/おばさんの法螺貝/チベットのおりん/パラダイスバード/サイの地響き/サラノキの下で/アリの石/ディディとブバ/チベタンブックショップ/トゥンバの魔法/マニ車とお経
◆ニューカレドニアの光
コウモリの毛/蚊の館/マドレーヌの滝/背の光
滞在国・都市名一覧
おわりに