世界の美しい民藝 アジア、アフリカ、中南米、巧藝舎のコレクション320点 / 著者・ 巧藝舎 / グラフィック社
横浜 山手町にある世界の民藝のお店 巧藝舎。
本書『世界の美しい民藝 アジア、アフリカ、中南米、巧藝舎のコレクション320点』は、こちらの巧藝舎が1970年代から90年代にかけて海外からの買付により集めたコレクションがヴィジュアルメインでおさめられた一冊です。
民藝とは謳われているものの、ページをめくってみると、そこに掲載されているヴィジュアルは少々デコラティブなものが多く、祝祭や祈りのために制作されたものだということがわかります。
日本の民藝品と比べるとカタチや色合いなどが浮世離れしており、その全体像には目に見えぬものへの想い、憧れ、恐れなどが全て凝縮され表現されています。
中南米、アフリカ、アジアと章立てがされており、各アイテムにキャプションつきでまとめられているのですが、どこか似たようなものもあるのが面白いところ。きっと万国で共通する自然観や信仰の奥の普遍的な部分が似通っているのかもしれません。
さて、本書の『おわりに』に書かれていたことで、こうした各地の作り手が情報化社会になる中で本来自らの生活や家族、信仰だけのために制作されていたものが、どこか合理的なもの、どうすれば人々に手に取ってもらえるかなどマスのマーケットを意識した消費主義に陥ってきてしまっていることを懸念されているのが印象的でした。
本書のコレクションは、きっと人々の心にどのようなものが響くのかということを問いかけてくれる一冊になることでしょう。
<目次>
1章 中南米の民藝
2章 アフリカの民藝
3章 アジアの民藝 濱田庄司、芹沢銈介の収蔵品も紹介
巧藝舎
候・風土・生活習慣など、暮らしの中から生み出され、受け継がれてきた民芸品の数々を世界各地から集め、販売、コレクション提供を行う。常時数万点をストック。
かつては、濱田庄司、芹沢銈介らのコレクションに協力し、現在では日本各地の博物館や美術館の民藝コレクションの多くを担う。