アートの力 / 著者・マルクス・ガブリエル、翻訳・大池惣太郎 / 堀之内出版
美的実在論
ここ最近の面影 book&craftのポッドキャスト『面影飛行』で収録をさせてもらった岡澤浩太郎さんや赤阪友昭さんのお話を聞くにつけ、私たちが存在していることの不思議さやその不確かさを考えさせられています。中でも岡澤さんがの人間の意思とは別の次元にある根本的な美しとは何かをモノから探求する姿勢や、赤阪さんの自然の理の中にある説明のつかない現象の美しさを見つけることはアプローチは異なれど、結局は美しさとはなんなのかという哲学的な問いかけに行き着くことになるのでしょう。
それが個人の方によっていけば美意識になり、集団の方によっていけば空気感ということなのだと思います。
さて、そんなようなことを考える理解の補助線になっていくのが本書マルクス・ガブリエル著書の『アートの力』です。「私たちがアート作品を生み出すのではない。アート作品こそが、自分を存在させはじめるために、私たちを参加者として創造するのだ。」と語る天才哲学者のマルクス・ガブリエル。私たちはいかに作品に向き合うべきなのか? 特定のジャンルを越え、すべての作品に通じる鑑賞態度を拓く内容となっています。内容を見てみると知識や背景を教えるものではないとわかることでしょう。
特定のジャンルや作品ではなく、アート全般に通用する鑑賞態度、アートと人との関係性などについて思考をマルクス・ガブリエルと一緒に掘り下げるような内容で知識や経験が豊富でなくても、アートの世界に分け入ることができます。
『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)等のベストセラーで知られる哲学者が、アートの持つ力の根源に迫る美的実在論が一冊に。
<目次>
序文 ベルナール・ジェニエス
アートの力
アートの価値
美学と知覚
パフォーマンスとしての解釈
自律性、ラディカルな自律性、オリジナリティ
アートと(権)力
補論 懐疑のアート、アートの懐疑
訳者解説 大池 惣太郎
マルクス・ガブリエル
1980年生まれ。哲学者。29歳で、史上最年少のボン大学哲学科教授に就任。
「意味の場」をキーワードに自身の新しい実在論を展開するほか、シェリングやヴィトゲンシュタイン、ハイデガー等、ドイツ哲学を中心に著作を執筆し、世界的な注目を浴びている。本書のほか、『神話・狂気・哄笑』(堀之内出版、2015年)や、『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018年)等の訳書多数。