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「おのずから」と「みずから」 ――日本思想の基層

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「おのずから」と「みずから」 ――日本思想の基層 / 著者・竹内整一 / 筑摩書房



自のあわい




自ら(みずから)と自ずから(おのずから)からという言葉を意識し始めたのは、自然農をはじめてからです。自分は自然農の教えをYOUTUBEを通して学んでいるのですが、畑の様子や動画のトピックの後半に必ずお話の時間があり、毎回テーマは異なるのですが、最終的に行き着くところは自分と自然というところに帰結していきます。

特に自然農を長くやっておられることもあり、自然というものの解釈が動画を見始めた頃は目から鱗で、『「自然」とは、「自ずから然らしむる」(おのずからしからしむる)』という意味。つまり植物が発芽し、育ち・花を咲かせて種子を結ぶといったように、外部のコントロールなしにその状態や変化が継続してそのような結果になっていく状態のことを指すようです。この『自然』という言葉の解釈の中で出てきた自ずから(おのずから)という目には見えない作用がとても不思議なのですが、自分の中でいつも躓いていた何かを解消してくれるような考え方で、今ではその「自ずから然らしむる」という言葉を頼りにオモカゲファームでの農に勤しんでいます。



さて本書『「おのずから」と「みずから」 ――日本思想の基層』は、タイトル通り思想家の竹内整一さんが「自(ずか)ら」という語があらわす日本人の基本発想とはどのようなものかという考察や考えをまとめた一冊になっています。私たちが普段から使っているコミュニケーションや言葉の上に乗っている感情のようなものを深く分析・考察してくれていて日本人の自己認識、超越や倫理との関わり、死生観を問う内容になっています。


腑に落ちたのが、自らを突き詰めていくと没頭の境地、つまり無の境地に至り、それが自然となっていき他者の無の境地と共鳴しあっていくという部分でした。けれど互いの無が全くの同化になっていかないところ、その歪みが人間の面白さなのだろうと解釈できました。


これからの時代、日本人の自然と自己の「あわい」のある考えや発想に注目が集まってきそうです。

こうした足がかりにうってつけの一冊です。






<目次>



I

第一章「おのずから」と「みずから」――日本的「自然(おのずから)」と自己

第二章無常と「おのずから」――日本人の現実感覚①

第三章「古(いにしえ)」と「おのずから」――日本人の現実感覚②

第四章宇宙人生の「不可思議」さ――国木田独歩の覚めざる夢

第五章「おのずから」の捜索――柳田国男の「人生を自然の片端を観ずる練修」

第六章近代自己から「おのずから」へ――清沢満之の〈内〉への超越

第七章生と死の「曖昧」な肯定――正宗白鳥の臨終帰依

第八章「空即是色」の荘厳――「おのずから」と「みずから」の「あわい」の輝き


II

やまと言葉で哲学する――「おのずから」と「みずから」の「あわい」で考える


III

総括「おのずから」と「みずから」の「あわい」


あとがき

文庫版あとがき




竹内 整一
1946
年長野県生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東京大学名誉教授。専門は倫理学、日本思想。日本人の精神の歴史を辿りなおしながら、それが現在に生きるわれわれに、どのように繋がっているのかを探求している。主な著書に、『「やさしさ」と日本人』(ちくま学芸文庫)、 『「かなしみ」の哲学』(NHKブックス)、『花びらは散る 花は散らない』(角川選書)、『ありてなければ』(角川ソフィア文庫)、『やまと言葉で哲学する』『やまと言葉で〈日本〉を思想する』『魂と無常』(以上、春秋社)などがある。

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