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TAMPOPO 13

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TAMPOPO 13 / コラクソー


 

「生きること」「死ぬこと」「食べること」



 

北欧を取材で回っていると2週間という限られた時間の中でも、突然ラーメン、というよりもスープ系のヌードルが無性に食べたくなる時があります。そんな時はコペンハーゲンであれば行きつけのベトナム料理屋さんでフォーを頼んだり、その場所場所の美味しいラーメン屋を見つけてはトライしてみるということをしています。特にスウェーデンの首都ストックホルムの旧市街・ガムラスタンにひっそりと佇むラーメンカフェ?のラーメンは日本で食べるものに割と近く、この時ばかりは日本が急に恋しくなってしまうのでした。


そうやって海外でラーメンを食べる機会が増えて、異国の地でラーメンを啜っていると、やっぱり日本人のラーメンを食べている姿は、当人はラーメンに向かってがっついているようでいますが、側から見るとそれはとても美しいなと感じられます。“ラーメンに向かう。”何気なくそう書いていますが、その姿勢が〇〇道という一つの道を極めていくという日本人に馴染み深い行為から連想される言葉で日本人特有の眼差しなのだということにも気付かされます。


ちょうどそうやって飛行機に乗り海外を旅していた時でしょうか。飛行機の中のエンターテイメントサービスで『TAMPOPO』という映画を初めて観たのが、僕とこの映画の出会いだったように思います。『TAMPOPO』という映画は映画俳優、デザイナー、エッセイスト、後に映画監督としても活躍した伊丹十三が手がけた映画で、タンクローリーの運転手でラーメン通のゴローがさびれたこのラーメン屋を立て直すべくタンポポを特訓し究極のラーメン作りに乗り出す西部劇『シェーン』を彷彿させる設定で“ラーメン・ウェスタン”としてニューヨーク、パリなど海外でも大ヒットを記録した映画です。


メインのストーリーの合間に差し込まれている一見関係のないサイドストーリーも示唆深く、ラーメンだけでなく食べ物が出てくるシーンは60シーン、出てくる食べ物は100種類を超える「食べ物の映画」でもあり、伊丹はこの映画を通して「生きること」「死ぬこと」「食べること」を一旦立ち止まって考えさせるような仕掛けを様々な場面に散りばめているのが特徴的です。そういったこともあり、やれあのシーンはこういったことを暗示しているだとか、鑑賞後の考察などにも事足りません。


そしてこの『TAMPOPO 13』という一冊には、この差し込まれた13のサイドストーリーについてこれを如何に読み解くか否かを様々な分野、そして異国で活躍する方の寄稿文やインタビューがまとめられています。いわばたんぽぽの綿毛があちらこちらに飛んでいくが如く、様々な考察があちらこちらに展開していき、ああ、そんな見方もあるのかと感心させられます。


白服の男と情婦がお腹いっぱいに見せつける、エロティシズム。

ビジネスランチとスパゲティ講座に垣間見る、謙遜の美徳と崩壊。

ホームレスが教えてくれる、エレガンス。

詐欺師の老紳士やカマンベールの老婆が投げかける、執着心。

歯医者の治療で見え隠れする、フェティシズム。

走る男とひん死の母ちゃんが教えてくれた、死生観。


流して観てはならない、大切なこと。



没後25年。“伊丹愛”に溢れたアウトサイダーたちが、13のサイド・ストーリーから『タンポポ』を紐解く一冊になっています。



ああ、無性にラーメンが食べたいな。



〈寄稿者〉
菅付雅信(編集者)
梶野彰一(フォトグラファー・文筆家)
青野賢一(文筆家・選曲家)
鍵和田啓介(ライター)
林伸次(bar bossa店主・小説家)
猫沢エミ(ミュージシャン・文筆家)
湯山玲子(著述家・プロデューサー)

長谷部千彩(文筆家)

ヴィヴィアン佐藤(非建築家・美術家)
中島敏子(編集者)
杉山恒太郎(株式会社ライトパブリシティ代表取締役社長)
平松洋子(エッセイスト)
ウィリー・ブラックモア(米ジャーナリスト)


〈インタビュイー〉
サム・ホワイト&レイニエル・デ・グズマン(RAMEN SHOP, Oakland)
野村友里(eatrip)
菊池亜希子(女優)
田中知之(FPM)
アイバン・オーキン(IVAN RAMEN, New York)…

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