遠い町から来た話 / 著者・ショーン・タン、翻訳・岸本佐知子 / 河出書房新社
子どもの頃の眼差しで
この一冊を手にしたときにまず目に入るのが表紙に描かれた宇宙服のようなけれどもそれともどこか異なるようなイラストでしょう。オーストラリアのイラストレーターで絵本作家、そして動物系のSFものを描いているショーン・タンが何気なく描いたスケッチだそう。
この『遠い町から来た話』は2008年に創刊された短編集 / 絵本は表紙のイラストのように、日々ショーンが何気なくスケッチブックに描いたイラストや落書きから着想を得て物語にした作品です。
内容は、水牛の話や壊れたおもちゃ、忘れ去られた詩、それから棒人間と、なかなかこれらのモチーフでは描くことが難しそうな物語なのですが、そこはショーン・タンの腕の見せ処、しっかりとおとぎの国に誘われていくことでしょう。
想像はイメージでしかなく、そのイメージとの交流は言葉では成し得ない。
イメージから生まれ展開していく物語は、どこか子どもの頃に私たちが自然に行なっていた日々とよく似ているのではないのでしょうか。
さあ、子どもの頃の眼差しで、想像と現実のあわいを楽しんでみてください。
ショーン・タン
1974年オーストラリア生まれ。絵本作家。本書のほか、『遠い町から来た話』『セミ』『内なる町から来た話』など。リンドグレーン賞、グリーナウェイ賞など受賞多数。『ロスト・シング』でアカデミー短編賞受賞。
岸本 佐知子
1960年生まれ。翻訳家。訳書に、ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジュライ『最初のは悪い男』、ベルリン『すべての月、すべての年』、ソーンダーズ『十二月の十日』、タン『内なる町からきた話』など。