気のはなし 科学と神秘のはざまを解く / 著者・若林理砂 /ミシマ社
広大な気の世界
私の通っていた小学校には、確か4本の大きなイチョウの木があってそれぞれ『元気』『根気』『勇気』『本気』と名札が付けられ、学校の標語のようになっていました。秋の運動会のシーズンになるとそのイチョウの葉が黄色に色づき子どもながらに季節の変化を感じたものでした。在学中かそれより後に、台風や雷で木が焼けたり、折れたりしたようで、現在はかろうじて2本だけ残っているようなのですが、改めて考えてみると自分の考え方の根幹にこの4つがあるような気がします。
いつも『元気』でいよう(いたい)。そして『勇気』を持って行動しよう。大きなことも小さなことも、どんな時も『本気』で、『根気』強く生きていこう。といった感じでしょうか。つまり言わんとすることは、『気』が大事だということなのではないでしょうか。全てが『気』に通じていくと考えれば、世の中もっとシンプルになっていく気がします。
さて、本書『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』は、臨床家・鍼灸師の若林理砂さんが中国の古典から現代科学の知見までを用いて誰もが一度は気になったことのあるであろう『気』の世界について解説してくれている一冊になっています。
『気』という文字の起源、孔子・荘子・老子・孟子の考えた『気』、易や風水の『気』、東洋医学の『気』、科学の『気』、日常の『気』、武術の『気』、鬱と『気』などなど、鍼灸師として「科学の目で見た解剖学・生理学ベースの治療」と「なんだかわからないけれど効く治療」を絶妙なバランス感覚で扱う著者だからこそ書けた、広大で多種多彩な『気』の世界がまとまっています。
本書を読むと、理屈だけではわからない『気』の世界を理解し、東洋医学や養生をより深く捉え実践できるようになります。
広大な『気』の世界を知れば、あなたの好奇心がくすぐられること間違いなしです。
<目次>
1章 気の起源
2章 孔子・老子・荘子の気
3章 孟子・道教の気
4章 易と風水の気
5章 東洋医学の気
6章 科学の気
7章 養生と気
若林理砂
臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年にアシル治療室を開院。予約のとれない人気治療室となる。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラとブラジリアン柔術。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』(ミシマ社)、『安心のペットボトル温灸』(夜間飛行)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)など多数。