ポルトガル物語 漁師町の春夏秋冬 / 著者・青目海 / 書肆侃侃房
ポルトガルのささやかな生活と人
ポルトガル。実はいつか訪れたいと思っている憧れにも似た国の一つでもあります。小中高大とサッカーを続けていた私はいわゆるサッカー小僧。初めて買ったユニフォームはスペインのバルセロナやレアル・マドリードで活躍したルイス・フィーゴのポルトガル代表のレプリカユニフォームでした。
サッカーという文脈以外でも燦々と降り注ぐ南ヨーロッパ特有の色彩感覚、そして首都リスボンをはじめとするタイルを使った建築群も大人になってからも気になっています。それにヨーロッパの友達に話を聞くと皆口を揃えていうのが『美味しい街、国』だということ。そういった話を聞くにつけ、早くポルトガルの地に降り立ちたいそんな気分でいっぱいです。
さて、本書『ポルトガル物語 漁師町の春夏秋冬』は脚本家でライターの青目海さんが旦那さんのお仕事の関係でポルトガルの南端アルガルベ地方にある小さな漁師町オリャオで過ごした20年間を春夏秋冬のカテゴリーで綴った紀行エッセイです。取り上げられているトピックもどれもガイドブックのような場所に紐づいたものではなく、あくまで日々の営みの中から生まれたトピックでまとめられています。特に固有名詞で出てくる人物のキャラクターがみんな個性的です。それらの人物説明は最小限なのですが、読み進めているといつの間にか頭の中でその人たちの人物像が出来上がっており、あたかも青目さんの横でその出来事を垣間見ているような感じになることでしょう。
青目さんが本書で触れているように、この小さな漁師町には観光地然としたものは確かに何もなさそうですが、それ以上に魅力的で飽きがこないような人たちが大勢いるのだということがわかりました。
さあさあ、この一冊でさらにまた、まだみぬ地、ポルトガルへの想いは募っていくのでした。
<目次>
プロローグ
マップ
春
春の極楽市場
南ポルトガルの日本食
花の野原のお楽しみ
美しき老人の退廃の館
春の魚市場・魚三昧
漁師町の笑う犬
お行儀のいい友達
ポルトガル語のいらない暮らし
世界で一番素敵な美容院
ユーロに群がりたどり着いた人々
忙しい女たち
夏
漁師町の天国と地獄
マフィアの秘密の花園
夏の風物詩・傾いたおじさん
鰯という至福
島へ渡る
海を眺める犬
夏の友達
秋
女たちのバカンス
秋のお楽しみ
男たちの美しき仕事
地獄の天使・パトリシア
謎のロシア人とパーティーの始まり
令嬢、さっちゃん
罰を受ける男たち
幸福な妻
冬
踊る子豚
金持ちすぎた男
漁師町と高級エリアの日本人妻
冬のパーティーと映画の夜
もっとも恐ろしい体験
そして、別れ……
エピローグ
ポルトガル情報
青目海
脚本家・ライター。東京生まれ。劇団「天井桟敷」の創立メンバー。19歳で「スター千一夜」で構成作家デビュー。以後、テレビドラマの原作、脚本を手がける。パリ、ローマに始まり、結婚後は、カナダ、ニューヨーク、メキシコ、モロッコ、スペインなど、海外生活は30数年にわたり、南ポルトガルの小さな漁師町に20年暮らす。2015年に帰国、伊豆在住。
脚本/「 親にはナイショで」「東京ローズ」他。舞台/「アカシヤの雨に打たれて」著書/『私は指をつめた女』(文春ネスコ)、『南ポルトガルの笑う犬』『リスボン 坂と花の路地を抜けて』(書肆侃侃房)など。