書簡集 それでも変わらないもの / 作者・椋本湧也、ブックデザイン・脇田あすか
- 人が感じる幸せと価値は変わらない -
記憶、感謝、恥ずかしさ、悔しさ、喜び、哀しみ。
こういった感情の記憶が本書のページをめくるごとに、頭の中に言葉、そして感覚として吸収されていきます。
本書『書簡集 それでも変わらないもの』は、世界22カ国で暮らす30名の日本人が、変わりゆく中で変わらぬものをテーマに、それぞれ今感じていること手紙に綴った書簡集です。
共通点は、ケープタウンからワシントンD.C.、ノルウェーのベルゲン、チリやインドのデリーまで異なる場所に滞在する日本人であり、同じ時代を生きているということ。
そして、各々の地で生きる中で感じた心が震える(震えた)瞬間が一冊に書簡集というかたちで編集されています。
人は何に感動し、何を悔やむのか。
その心の揺れ動きは、いつの時代でもどの場所であっても、そうそうに変わることはないということに気がつくことでしょう。そして収録されているみなさんの心が震えた瞬間を活字として感じてみると、自分の人生も優しく肯定されているかのような、そんな感覚にもなります。
巻末には読者の皆さんが「それでも変わらないもの」というテーマで返信の手紙としてやりとりができる募集ページ欄が設けられています。本書の作者・椋本さんらしい書き手と読み手の境界線をピョンと飛び越えられるような仕掛けがとても素敵です。
また、手紙の書き手ごとに文章のはじまる位置や場所のレイアウトが異なっていたり、フォントが変わっていたりと視覚的にも言葉からも、個性が伝わってくる内容になっています。ブックデザインを手がけた脇田あすかさんのデザインの工夫が書き手の言葉に活力を与えているのがとても印象的でした。
この本に書かれている文章は、言うなれば赤の他人の文章なのですが、どこか自分の何かと共鳴し、あなたの中のわたし、わたしの中のあなたという感覚が開かれ、きっとあなたの心を動かすことでしょう。
本書のfrom Maho (Copenhagen)のMahoさんは、面影 book&craftからの推薦寄稿です。
こちらのMahoさんと収録した面影飛行も合わせてお楽しみください。
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" 2020年の初頭に始まった世界的なパンデミックは、僕たちの生活に大きな変化をもたらしました。日常も、仕事も、人間関係も、たった数年前までは想像すらしていなかったような変化が今なお続いています。そんなめまぐるしい日々の中には、この状況でなければ気づけなかったことや、自分の生活を支えてくれたもの、それでも変わらなかったものが誰しもにきっとあるはず。その生活の小さな記憶を、「変化のただなか」から、手ざわりのある形として残しておかなければ、僕たちは本当の意味で次の一歩を踏み出すことができないような気がするのです。僕たちはひどく忘れっぽく、記憶を塗り替えてしまう生き物だから。"
(本文「はじまりの手紙」より)
藍色の表紙に銀の箔押しがきらりと光るブックデザインは、前作に引き続き脇田あすかさんが担当しました。
巻末には作曲家の吉田文さんがこの本のために書き下ろした楽譜が掲載されています。
この本を手に取ってくれたあなたは、この数年間、どんな景色を見て、何を感じてきましたか?あなたからの返信の手紙を、世界各地からお待ちしています。
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作者:椋本湧也
ブックデザイン:脇田あすか
印刷・製本:シナノ書籍印刷