大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち / 著者・藤井一至 / ヤマケイ文庫
地球には最初、土がなかった。
やがて地球上に誕生した生き物から土が生まれ、
現在に続く土と生命の物語が始まる。
土の中に残された多くの謎を掘り起こす
5億年の壮大なドキュメンタリー。
土の研究者である藤井一至さんが、土が生まれ生命が育まれ始めた5億年を紐解いていく一冊です。土をめぐる自然現象の精緻さと、過酷な条件下でもたくましく生きてきた動植物、そしてヒトへの驚きと感動がまとめられています。
この一冊を手にするまで、いのちを育んでいる土がどういう性質のものなのかということは全く分かっていなかったということを実感させられます。
そして『所変われば品変わる』と言ったところでしょうが、場所が異なると土も変わるものでそこでの生活スタイルや習慣なども辿っていけば土に行きつきます。
土は野菜や稲、小麦を育てる土壌と思いがちですが、我々ヒトも同じくその土によって育まれているのです。
スーパーに行けば、きれいに洗われた野菜たちがならび、土といのちの結びつきが見えにくくなった今。
自分たちの足元にある当たり前の土をもう一度見直していくことが、環境もヒトもよくしていくきっかになるのでしょう。
是非ページを開いてみてください。
<目次>
プロローグ 足元に広がる世界
地球は茶色かった?/旅をはじめる前に
第1章 土の来た道:逆境を乗り越えた植物たち
土壌が存在しなかった地球/大陸移動とシダの森/樹木とキノコの物質循環/ジュラシック・ソイル/砂上の熱帯雨林/氷の世界の森と土/奇跡の島国・日本
第2章 土が育む動物たち:微生物から恐竜まで
栄養分をかき集める生き物たち/腸内細菌の活躍/土と生き物をつなぐ森のエキス・溶存有機物/緊縮財政の養分循環
第3章 人と土の一万年
ヒトの酸性土壌への適応/水と栄養分のトレードオフ/古代文明の栄枯盛衰:灌漑農業/熱帯林に適応したヒト:焼畑農業/田んぼを始めたアジアの人々:酸性土壌の克服/稲作と水田漁撈:消えたドジョウと食文化の変容/肥料の来た道:あなたのオシッコはいくら?/人口増加と土壌酸性化を加速させたハーバー・ボッシュ法
第4章 土の今とこれから:マーケットに揺れる土
エネルギーが届くまで/スギ林に囲まれた不思議な景色/ポテトチップスの代償/マーケットに揺れる土/納豆ごはんと水田土壌/土が照らす未来:適応と破滅の境界線
藤井 一至
土の研究者。1981年富山県生まれ。
2009年京都大学農学研究科博士課程修了。京都大学博士研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。
専門は土壌学、生態学。
インドネシア・タイの熱帯雨林からカナダ極北の永久凍土、さらに日本各地へとスコップ片手に飛び回り、土と地球の成り立ちや持続的な利用方法を研究している。
第1回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)、第33回日本土壌肥料学会奨励賞、第15回日本農学進歩賞受賞。『土 地球最後のナゾ』(光文社新書)で河合隼雄賞受賞。