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ショートケーキは背中から

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ショートケーキは背中から / 著者・平野紗季子 / 新潮社


 

食べたのものの記憶


 

結婚してから一時期ご飯の時にご飯のドラマやアニメを見ることが習慣となっていました。代表格は俳優の松重豊さんが演じる『孤独のグルメ』。誰しもが一度や二度は見たことがあると思いますが、そこまで急展開がないものの、食べるということの楽しみを伝えてくれるものでした。孤独と名がついていますが、それは決して寂しい孤独なんかではなく、自分一人の“食べること”の至高の楽しみと言っていいのではないのでしょうか。

もう一つ、アニメだと『美味しんぼ』です。『東西新聞』文化部記者の山岡士郎と栗田ゆう子を主人公とし、「究極のメニュー」作りを通して様々な人々が抱える悩みを、食を通して解決させるストーリーは、先に挙げた『孤独のグルメ』が食べることにフォーカスを当てたストーリー展開としたら、『美味しんぼ』がフォーカスするのは作ること。この『美味しんぼ』ででてきた調理に関するちょっとした蘊蓄を実際に料理をする時にやってみて美味しくできたらなんだか徳をしたような気さえしてきます。


さてそんなことを思い出させてくれたのは、本書『ショートケーキは背中から』を読んだためです。本書の著者は「きっと私は世界を理解したい。そのための手段が、食べものだったのだ。」と語るふーぢエッセイスト、フードディレクターの平野紗季子さん。実家すぎる店からいつかは訪れたい名店まで、人より貪欲に食べ、言葉を探し続けた20年の食べたものの記憶がエッセイとして一冊にまとめられています。

内容を見てみるとただの美味しいもの紹介になっていないところがポイントで、その場面での平野さんの置かれている心理的な状況などの情景描写がリアルに描かれており、自分自身の経験などにも照らし合わせてみたくなる衝動に駆られます。そして先の『孤独のグルメ』と同じく自分自身の中から食への探究心などが芽生えてきたりするところもとても面白い一冊です。


平野さんは最後のあとがきで、「食べものは残らないけれど、食べた記憶は残る」と語ります。


食べたものの記憶、是非ページをめくり確かめてみてください。


※お腹が減っている時にページを開くと、お腹がさらに減るので注意です!



<目次>

PROLOGUE 会社員の味

CHAPTER 1 言いたい放題 食べたい放題 ごはん100点ノート(1) #1―50

レストランが教えてくれるもの/供えられたい菓子/炊き合わせは和食界のパフェ/銀だこの旬は秋/あんこは冷たいのに限る/粥を炊く朝/キラキラって嬉しいですよね/タイムレスチーズケーキ/定食パーフェクション/ボエムへの恩を忘れない/ささやかな未知/巨大旅館の食事会場みたいな雰囲気/素食界のファンタジスタ/帰るべき港/世界一(平野調べ)のおしぼり/自分と気が合わない人をわざわざ家に入れたいと思わないでしょ/雲のように行き、水のように流れる/瞬間を閉じ込める/おみくじ何回引いても大吉味/香りがふわふわです/食後の生き霊/映えではなくて、愛/フード界の宮崎駿かな?/この汁の湖畔に住みたい/Merci言いたいのはこっちなんよ/謁見、ブルボンプリンセス/ネギのパンケーキが好き/しゃみしゃみポテト所望/五右衛門か油そばか/なんにもがんばらなくていい/心のドラが鳴る/シェア厳禁/ベーコンにメープルかけちゃうあなたのための料理/実家すぎる店/天上天下唯我独尊ウエハース/心ある料理とは/ガストロノミーってミュータントなんですよ/おいしさの北極星/ただただ味覚の受容体/はじから食べない/ほの甘い要素が付着した菓子の生地が好きなんだ/それはまるで小川のような/赤子の魂をまとめて喰らう妖怪/オーケストラが始まる前にフワァ~ってチューニングする音のやつ/どぶろくイルミネーション/風味と意匠を兼ねた仕事、心奪われがち/和菓子学園のアイドル/みんなの心が帰省した/射貫く/貪欲な愚か者

CHAPTER 2 味の道

夢中をください/味のホーム&アウェイ/ポテチは流れ星/最高の朝食

CHAPTER 3 歩いたりお茶飲んだり

窓の向こうの町/喫茶の味がもたらすもの。/味の保管庫/蝉の店

CHAPTER 4 旅のあれこれ

旅が必要/コーヒー飲めない/生まれるものと消えゆくものの間で/エゴマの香る街

CHAPTER 5 ガストロノミーの力

好きな言葉は大味必淡/優しい獣たち/nomaが壊してくれたのだ

CHAPTER 6 言いたい放題 食べたい放題 ごはん100点ノート(2) #51―100

都市の味がしない/店に世界を築くこと/本当に人が傷ついた日に食べるのは/日本食文化へのぬけ穴ボールペン/命綱であるところのコンビニの鍋焼きうどん/天ぷらの拡張/おいしすぎてはいけない/花束みたい/私も餃パに誘われたい/大歓喜の液体ピッツァ/ビリヤニは風/ドーナツの穴の方/こんな料理に出会うために/追いかけていたい人/追い詰められたらこれ/菓子からしたら私はゴジラ/人間を剥がす料理/実家皿の店/エルメスがお菓子屋さんやったら/そっと今に置き直す/皿まで温かいなんて/名古屋駅=山本屋チャンス/別にステーキみたいじゃないだろ/日本料理が開くもの/みんなで肩組んで歌いたかった/not水っぽいbutみずみずしい/クリスタルの宮殿/つづく、ということ/按田餃子があれば大丈夫/果実のzipファイル/光の料理/友達は多いほうがいいね/どうやってもこれになんない/自家製あんみつでKO/畳の大広間で食べる鳥すき/暗がりの料理/ネクストレベルマヨコーン/家味のコロッケとかいう幻の食べもの/土地を表現する料理/定食の一口目は湯気/宝石のようだから/赤ちゃんの匂い/私のビッグ人参/渋谷で最も天国に近い店/モスがあれば/GANTZ寿司/パイの実パサパサして嫌だ~と言っている人へ/解釈されてたまるか/うさぎのようだった/I'm a loyal Royal customer.

CHAPTER 7 あのころ

レジ横の細々としたおやつ/ニューヨーク、味の新世界/降りない。/「またみんなで行く♪」/赤い扉の先に

CHAPTER 8 味の道は続く

お菓子屋の日々/ショートケーキは背中から/トーストに溶けていたのは/そんなにおいしいものばっかり食べてたら

EPILOGUE あとがき



平野紗季子
1991年生まれ、福岡県出身。フードエッセイスト、フードディレクター。小学生の頃から食日記をつけ続け、大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり文筆活動をスタート。20248月現在は執筆に加え、ラジオ/Podcast番組「味な副音声」のパーソナリティ、菓子ブランド「(NO RAISIN SANDWICH」の代表を務めるなど、活動は多岐に渡る。著書に『生まれた時からアルデンテ』、『私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。』、『味な店 完全版』などがある。

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