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たぬきの冬

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たぬきの冬:北の森に生きる動物たち / 著者・石城謙吉 / 閑人堂



生き物を観る



サッカーなどをずっとやってきたので、動体視力はいい方だと思うのだけれど、東京にいる時は、なぜか野生の動物はなかなか良く見えないことの方が多かったように思います。けれど住まいを信州・上田に移し、周りに山や森に囲まれた場所に行く機会が増えたり、家庭菜園で自然の神秘ともいうべき野菜などの成長を目の当たりにするにつけ、次第にそれらが見えるようになってきた気がします。

それまで都会のリズム、つまり時間で全てが計画されて創られている世界で生きてきた者にとっては、自然が持つ自然環境から織りなされるリズムに順応するにはやはり、それ相応の環境の変化とそれなりの時間が必要だった訳なのです。今では視界の片隅でささっと動く日本トカゲのような美しいのだけれど、めちゃくちゃすばしっこい生き物もしっかりと観ることができるようになってきたのです。


さて、本書『たぬきの冬:北の森に生きる動物たち』は、北海道大学名誉教授で動物生態学、森林科学を専攻としている石城謙吉さんが、北国北海道に住む動物たちの生態と人間との関係性などにふれた、科学者の観察眼と探究心、動物たちへの愛情と温かいまなざしが心に響く、珠玉のエッセイ集です。

〝理屈抜きで動物好き〟の博士が暮らす不思議の森には、発見の驚きと喜び、笑いと涙があふれています。抜け目ないやつ、駄目なやつ、可愛らしいやつ、凄いやつ。キタキツネ、エゾタヌキ、ヒグマ、イタチやカワウソ。カッコウ、キツツキ、カケスにモズにクロツグミ……。北海道の山野を舞台に、多彩な動物が主役を演じる14の物語。 生態、変異、適応、すみ分け、種間競争、絶滅と保護。生きものと自然環境、拡大する人間社会が織りなす世界の多面性と奥深さを、明快でユーモアあふれる筆致で描かれています。


本書を読んでいると、日々もっと優しい目で物事を捉えていきたい、そんな気持ちになってきます。


自らも森の中に入って生き物を観たくなる探究心に溢れた一冊です。



<目次>
キツネの七変化
キツツキと木つつき
タヌキの冬
カインの末裔
種の輪郭
ヒグマ数理学
エゾリスとチョウセンゴヨウ
鳥のなかのサル
モズと先生
心のカワウソ〔ほか〕



石城謙吉
北海道大学名誉教授。専攻は動物生態学、森林科学。1934年、長野県諏訪市生まれ。北海道大学農学部卒業後、高校教員を経て、同大学院修了(イワナの研究で農学博士)1973年から23年間、北大苫小牧地方演習林長。同演習林の森林を総合的自然研究の拠点とするとともに、市民と自然の交流の場として開放。著書に『イワナの謎を追う』『森林と人間』『自然は誰のものか』など。

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