ポール・ケアホルム 時代を超えたミニマリズム / 編集・パナソニック汐留美術館、監修・織田憲嗣 / 青幻舎
家具の建築家
北欧家具と聞けば飴色のチーク材の木材を纏ったシンプルなフォルムといった印象を思い描く人が多いと思います。それもそのはず、ミッドセンチュリーといわれる1950年から60年代にかけてデザイン、製作された家具というものはそういった材を使って形作られることが多かったということやその時代に活躍したレジェンドのデザイナーたちが今でもフォーカスが当たることが多いのでそうした印象を受けるのでしょう。
さて、本書がフォーカスしているポール・ケアホルムも同時代を生きたデザイナーであるのですが、彼の作り出すものは先にあげた木を使った温かみのある家具というよりは、一つの家具の中にスチールや籐、石や金属など硬質な素材を取り合わせた少しピンッと張り詰めたスタイリッシュでミニマリズムな空気感を出すような家具を作っています。その姿は家具というよりはモダニズム建築で知られるコルビジェの建築から漂ってくる空気感に近いものがあります。こうしたこともあり、ポールケアホルムは家具デザイナーという言われより、家具の建築家と称されることが多かったそう。
日本の建築ともよく合い、愛好家の間でも根強く支持されている存在のポール・ケアホルムの家具やデザイン哲学について椅子研究家である織田憲嗣コレクションの中から重要作品約50点を中心に、貴重な図面や資料写真を豊富に収録された一冊になっています。
「椅子が素材や道具の個性と共鳴する自然な形を持つこと。そのことが構築的に明らかとなるようにしなければならない。椅子の美しさを最大限に引き立てなければならない」
「家具建築家」と呼ばれ、究極のミニマリズムと美しさを備えたケアホルムの、洗練された造形美とデザイン哲学を凝縮した決定版です。
「極意の深淵は存在する。デザインは本質を極め、その意図を創作すること。ポール・ケアホルムが極めた家具の美学と創意の記憶がここに宿っている」
田根 剛
織田憲嗣
椅子研究家・東海大学名誉教授・東川町文化芸術コーディネーター。1946年高知県生まれ。大阪芸術大学卒業後、髙島屋宣伝部にイラストレーター、グラフィックデザイナーとして勤務。その後独立しデザイン事務所を設立。1994年から北海道東海大学芸術工学部(当時)教授となり、特任教授を経て2015年まで務めたのち現職に。現在北海道東神楽町の森の中の自邸で暮らす。