Plant Lithographs / Ellsworth Kelly / Berkshire Botanical Garden
創造の源、エネルギーの観察記録
アメリカ出身で、20世紀を代表する芸術家のエルズワース・ケリー。
主に絵画や駆刻の作品群で知られていますが、その芸術的実賎の根幹は植物のドローイングにあると言われています。
5歳の頃、祖母から植物を描く技術を教えられたケリーは、生涯を通じてほぼ毎日実践を続けました。それが彼の核となる観察と知覚の形成に役立ったことは疑いようもありません。70年にわたるキャリアを通じて、植物ドローイングはときに、水彩や墨汁といったさまざまな画材で描かれることもありましたが、彼はグラファイトの鉛筆と線描を用いることを望みました。それもひとえに、植物が備える本質を表現するため。一見すると苦労の跡がなく、楽々と描いているように映りますが、これぞ観察と知覚に裏付けられた彼の真骨頂なのです。
この本に収録された版画の作品群は、ケリーが1964年末から翌年夏まで南仏に滞在したときの記録でもあります。のびやかに描かれる植物は観る側の心模様をも清々しいものにしてくれます。
text by Takiko Nishiki
<Plant Lithographsはこちら>
Ellsworth Kelly
20世紀〜21世紀のアメリカの画家。
第二次世界大戦戦後はボストン・ミュージアム・スクールに学びその後、1948年から6年間はフランスに滞在し、ハンス・アルプ、ブランクーシらの影響を受け、コラージュやレリーフの作品を制作。1954年アメリカへ戻り、1956年、ニューヨークのパーソンズ(英語版)画廊で初の個展を開催した。1963年のカッセルのドクメンタ、1966年のヴェネツィア・ビエンナーレにも出品している。
第二次大戦後の抽象表現主義の作家のなかで、いわゆる「ハード・エッジ(英語版)」(色面の輪郭が目立つ作風)の代表的な作家と見なされる。くっきりとした幾何学的形態の色面、色相対比を意識した色の組み合わせ、変形キャンヴァスの使用などにより、形態と色彩という絵画の根本的要素のもたらす視覚的効果を追求している。