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天動説の絵本

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天動説の絵本 / 著者・絵・安野光雅 / 福音館書店



その当たり前、本当?



友人や恋人、家族の相談に対しては、的確にアドバイスできるのに、こと自分自身のこととなると気持ちや思いなどが先立ってしまいなかなか冷静に現状を観察することや受け止めることが難しい、なんて経験は誰しもがあるはずです。

それは、あなたの注意力が欠陥しているとかそういうことでは全くなく、それが当事者であるということの本質なのではないのでしょうか。テレビゲームでも自分が操作していればこのダンジョンをどう乗り切るかを全体像やストーリーなどから逆算していくことで筋道を描くことができるでしょうが、仮に自分がそのゲームの中の主人公としてダンジョンを進めなければならない状況だとしたら、きっと目の前の敵や障害に目を向けるしかなく、どうしても近視眼的な物の見方になってしまうことは想像がつきます。

では、現実世界はどうでしょうか。他の人はいるものの、この世界はあなたの物語であるはずです。少しメタな視点でこの世の中やあなたの物語を俯瞰してみる、筋書きを追ってみるということは難しいのが現実です。今ではインターネットを介したやりとりが盛んなので、情報を多面的に捉えて自分の立ち位置や座標、置かれている状況などを少しは客観的に捉えることは容易になってきました。

それが数百年前だとしたらどうでしょうか。今では当たり前のことに対しても非科学的な悪魔や魔法使いの仕業だと結論づけたりと、今でこそ迷信だと鼻で笑うことができることかもしれませんが、その当時は大真面目にそういったことを信じていたはずです。それ以外にも海の果てはどこにあるのかや地球が丸いとするならば反対側の人は頭に血がのぼってしまうのではないか、といったことを皆割と本気で考えていたのでしょうね。


さて、前置きが長くなりましたが、本書『天動説の絵本』は日本の画家・装幀家・絵本作家の安野光雅の絵本になります。この本には、地球が宇宙の中心だと信じていた人々の世界の物語が安野さんの絵と文章で綴られています。

あとがきにもありますが、この本に長い題名をつけるとしたら『天動説を信じていたころの人びとは、世界がどのようなものだと考えていたか』だそう。「地面は丸い」「天の星ではなく、地面が動いている」、そう唱えた学者たちは、裁判にかけられたり、火あぶりにされたりしてしまう時代に、冒険好きな船乗りの一行が、西へ向かって船出していく様を当時の視点、つまり天動説を信じていた時の視点で考えることのできる一冊になっています。

今、わたしたちがこの物語を読めば少し滑稽にうつるかもしれませんが、これは当時の人たちにとっては当たり前のこと。その時、その時代の価値観や信じるものは異なれど、そんな当たり前をもう一度立ち止まり考えてみたくなるきっかけを与えてくれる絵本になっています。


小学生中級から大人まで幅広く楽しめる内容になっています。

プレゼントなどにもおすすめです。

 

 

1926年、島根県津和野生まれ。山口師範学校研究科修了。1974年度芸術選奨文部大臣奨励賞、ケイト・グリナウェイ賞特別賞(イギリス)、最も美しい 50冊の本賞(アメリカ)、BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞などを受賞。1988年に紫綬褒章、2008年に菊池寛賞を受ける。故郷津和野町には「安野光雅美術館」がある。

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