子ども当事者研究 わたしの心の街には おこるちゃんがいる / 著者・子ども・子育て当事者研究ネットワーク ゆるふわ / コトノネ生活
心よ。ひらけごま。
小学校4年生の頃、クラスの取り組みとして先生との手紙のやり取り(宿題)として『ホウセキカード』ということをやっていました。手紙の内容はその日にあったことを毎日書く、つまり日記のようなものだったのですが、親にも格好悪くて言えないこととか、その時悩んでいたことをこっそりと書いていたような気がします。先生はそれを読んでその悩みに対して赤字でコメントなどを書いてくれるのですが、他の場面でそのことには触れず、あくまで『ホウセキカード』のやり取りとして完結し見守ってくれているのが、なんとなく距離感が心地よかったことを覚えています。
子どもには子どもの悩みがあり、それを客観的に考えて言葉にする練習や機会を自然と作ってくれた当時の先生には感謝したいと思います。
さて本書は、季刊誌『コトノネ』39号で反響のあった『子どもの当事者研究』を書籍化したもので、子どもたちが日々直面する些細な悩みなどを親とのセッションをとおして客観的に子どもたち自身で研究した内容の事例がイラストベースでまとめられています。
子どもたちが日々悩んでいつ問題などを、問題の表面上の解決にフォーカスするのではなく、その問題が起こったことで子どもたち自身の感情がどのように変化したのかということを丁寧に紐解いていて整理し、そして自分以外の誰かに伝わるカタチで伝えられていることがとても素晴らしいことだと思いました。
言語的に発達し表現できる大人ならまだしも、まだうまく自分の感情表現を他者に伝えるための言語化が十分でない子どもにとって、この『子ども当事者研究』のプロセスはとても親と子どもにとってとても有意義で必要な時間だったのだろうと感じ取れます。本書は『親』と『子ども』が子ども当事者研究に取り組む様子がまとめられていますが、この『親』と『子ども』の部分を、『上司』と『部下』だったり、友達同士、恋人同士などに変えてもお互いをより良く知るきっかけや機会になるのでしょう。
あなたのこころは閉じていますか。開いていますか。
さあ、心よ。ひらけごま。
<目次>
はじめに 内田幾望
当事者研究の世界へようこそ 向谷地生良
【研究の紹介】
■「自分の気持ち」や「家族」のこと
おこるちゃんの研究
お母さんと遊び足りない! の研究
お父さんの圧の研究
■「学校」のこと
はりこさんの研究~学校との付き合い方
「キモい」の研究~なぜぼくは、キモいと言われるのか
どん底に落ちて、はいあがる研究
■「自分のからだ」のこと
身長と自分責めの研究
「子ども当事者研究」の研究
あとがきにかえて 熊谷晋一郎