自然農と漢方と: いのちに添って / 著者・川口由一 / 言視舎
自然であるとは、何なのか?
『自ずから然らしむ』と書いて自然。これは一体何のでしょうか、というのが本書『自然農と漢方と: いのちに添って』に目を通して感じたことでした。『耕さず(不耕起)、草や虫を敵とせず(無農薬)、肥料を用いない(不施肥)』という自然農の先覚者であり、2023年6月に惜しまれつつも荼毘にふされた川口由一の1993年に出版された『自然農から農を超えて』を再刊した本書の中には、自然農のことだけではなく、ご自身も実践者として学んでこられた漢方のことなどが一冊にまとまっています。
農にしろ病にしろ生命の営みというものは、良いほうに展開しようとしていて、私たちがネガティブに感じてしまう病気やネガティブなことは全てその状況を何とかしようとしている生命の営みのプロセスであることが語られています。その中で共通しておっしゃっていることが「命令しない」ということ。コントロールしようとせずに自然の流れに任せるということを大切にされています。
自分の思い通りにしようとすると結局何事も過剰になり、執着や依存のきっかけを生んでしまうことになります。そういった生命というものに相対する時に心がけたい姿勢として『し過ぎない』ということを意識して生活していきたいなと感じることができました。
30年前に書かれた本なのですが、世の中、生命の理がまとめられているように感じます。
この本には明確な答えは載っていません。
是非、自然とは何なのかという大きな問いを持ちながら実践してあなたなりの答えを見つけてみてくださいね。
<目次>
第1章 自然の法に添った農(自然農に出会うまで;栽培を是とした自然農を模索する;生命のめぐりの中で ほか)
第2章 漢方医学からの気づき(祈る思いで薬を見立てる;生命の営みは良いほうにしか展開しない;生命の法に添った治療 ほか)
第3章 「気づき」から「智恵」へ(学びの場が生まれる;葛藤の中から気づきは生まれる;繰り返しながら「わかる」 ほか)
川口由一
1939年、奈良県桜井市生まれ。専業農家から「不耕起・不施肥・無農薬」という、いのちの営みに添った自然農の理と栽培技術を確立するとともに、独学で漢方(古方)の古典書を読み解く学びと実践を始める。1991年に学びの場「赤目自然農塾」を開き、以後、全国各地で生まれる自然農や漢方を学ぶ場の指導にあたる