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山のメディスン―弱さをゆるし、生きる力をつむぐ―

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山のメディスン―弱さをゆるし、生きる力をつむぐ― / 著者・稲葉俊郎 / ライフサイエンス出版



山が教えてくれたもの




山登りとは縁遠い人生を歩んできました。登った回数は片手に収まるほどで、成人してからは1回しか登っていません。どういう流れでその一回を経験したのかという最初のきっかけがもはや思い出すことができないのですが、社会人になって会社だけのコミュニティだけでなく、社外の繋がりも欲しいと思っていた時に足繁く通っていたコミュニティで仲良くなった先輩に半分騙され、そんな騙されている状況もこちらも半分楽しみつつ、連れられて行ったように思います。

舞台は、奥多摩の川苔山。登山口の駅からなだらかに続くアスファルトで舗装された道を30分ほど歩いていると山道につながりそこからドンドンと険しくなってくるのです。その先輩からは初心者の山と言われていたのですが、蓋を開けてみれば初心者には険しい山で知られているような山でした。ただ登ってみると移り変わる自然の景色、そしてさっきは木漏れ日があったと思ったら、突然霧雨が降ってきたりと、全てが試されているような状況に少しアドレナリンが出ていたように思います。

そして何事もなく山頂で昼食をとり、下山。登山靴を普段のスニーカーに履き替えてアスファルトで舗装された道を歩いてみると、普段自分はこんなペラペラの靴でこんなに固い地面に足をついて歩いているのかという不思議な感覚がありました。そんな変な感覚を味わいつつ、近くの中華料理屋でたらふく食べたご飯の美味しさは格別だったという、山の中というよりは山での体験を経て、日常とのギャップに大きな感動を覚えたそんな山体験だったのです。



さて、本書『山のメディスン―弱さをゆるし、生きる力をつむぐ―』は、軽井沢病院の院長を務める稲葉俊郎さんが自身の人生を山との関係性と結びつけながら山から教わったこと学んだことをまとめた一冊になっています。

病院にアートの手法を応用するなど、多方面での活動を展開し、注目を集める医師である稲葉さんは、「生きていくうえで大切なこと、かけがえのないことのすべてを山から学んだ」と語ります。

心身の不調に悩まされていた著者の学生時代や大学時代の山との出会い、山岳部でのエピソードを紹介するとともに、長年の登山や山岳診療所での経験などを通して深めた著者独自の思索の数々を「メディスン」をキーワードに展開していきます。また、巻末には山岳診療所所長や山岳部監督を務めた著者独自の登山テクニックと救急医療のABCを解説。登山愛好家・自然を愛する人に読んでほしい現代版『山のパンセ』です。


この一冊を読んだ後には、今まで自分が感じていた山という概念や山の役割といったようなことの枠組みが広がっていくような感じがしてきます。

しばらくクローゼットに眠ったままになっている登山道具も引っ張り出す日も、そう遠くはなさそうです。


<目次>

はじめに

プロローグ

第1章 山と出会う

第2章 山岳部と山岳診療所

第3章 山岳医療という場

第4章 いのちの居場所軽井沢

第5章 山と芸術

第6章 登山から学んだチームのつくりかた

第7章 登山に活かすいのちの知恵

第8章 いのちを守る山の救急箱

おわりに



稲葉俊郎

1979年、熊本生まれ。医師。東京大学医学部付属病院循環器内科助教を経て、20204月より軽井沢へ移住。現在は軽井沢病院院長・総合診療科医長、信州大学社会基盤研究所特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、東北芸術工科大学客員教授に就任。「山形ビエンナーレ20202022」では芸術監督も務める。医療の多様性と調和への土壌づくりのため、西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。芸術、音楽、伝統芸能、民俗学、農業など、あらゆる分野との接点を探る対話を積極的に行う。共著に『見えないものに、耳をすます』(アノニマ・スタジオ)、著書に『いのちは のちの いのちへ ―新しい医療のかたち―』(アノニマ・スタジオ)、『ころころするからだ』(春秋社)、『からだとこころの健康学』(NHK出版)、『いのちの居場所』(扶桑社)、『ことばのくすり』(大和書房)など。

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