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ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと

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ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと / 著者・ミヒャエル・エンデ、翻訳・田村 都志夫 / 岩波現代文庫



ユーモアの語り部



物語。それが真実の出来事であろうと、創作によるイマージュであろうと、誰かが誰かに伝え続けることで物語という言葉が編まれて、今私たちの知り楽しんでいる物語になっているかと思います。幼い頃に物語を読んだ時は、まだ見ぬ物語へ先を急ぐべく、次のページを早くめくりたい衝動に駆られる、そんなワクワク感を纏ったものだったように思い出されます。

このワクワク感、物語の前半に伏線を張って、そしてクライマックスに向けそれを回収していくといったように、さぞ作家は計画的にそういった仕掛けを物語の中に散りばめているのだと思っていました。もちろんそういうことを緻密に考えて作品を作る作家もいるのでしょうが、世界の児童文学に多大なる影響を与えた『モモ』などの作品の著者であるミヒャエル・エンデは本書『ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと』の中で、あくまで登場人物たちの偶発性に任せて物語を展開していくと話をしています。

登場人物たちの関係性の間から辻褄が合うようなストーリーを見つけ出していく作業は画家が一つの色をキャンバスに塗りそこから思考や発想を広げていく作業ととても似ていると本書で語られています。エンデはあくまでそういった間の世界を言葉という道具を使って語っていたのだということが本書に目を通すと感じられることでしょう。

また本書は長年エンデの作品の翻訳を手掛けてきた田村都志夫さんとエンデの座談の内容をまとめているのですが、その中でエンデは『ユーモア』について至る箇所で語っています。彼の言葉の定義によれば、「自分が不完全であるということを認め、おおらかに微笑む態度」であるユーモアをどのように物語の中で感じてもらうのかということが物語を駆動させる原動力になっているのだということを感じられることでしょう。


さて、機械化が進んできている現在。

エンデが残した言葉があなたのこころにどんなふうに感じられるでしょうか。

是非、後世に遺していきたい一冊です。



<目次>
1 書くということ(言葉、そして名;物語の自律性、そして本という名の冒険;船の難破体験、そしてユーモア ほか)
2 少年時代の思い出(エンデの家系、そして少年時代について;少年時代―馬の話;少年時代―サーカス芸人やピエロのことなど ほか)
3 思索のとき(素潜りする病室の隣人;シュタイナー人智学の芸術観;漢字、身体、そして消える黒衣 ほか)
4 夢について
5 死について




ミヒャエル・エンデ
1929年、ドイツ南部の町ガルミッシュで生まれる。父はシュールレアリスムの画家エトガー・エンデ。1950年から俳優として演劇活動をおこない、そのかたわら、戯曲、詩、小説を試作する。1960年『ジム・ボタンの機関車大冒険』を発表。この作品で1961年にドイツ児童文学賞を受賞。その後、『モモ』、『はてしない物語』(ネバーエンディングストーリー)などを発表。現代社会を鋭く見つめて描かれた作品は、児童文学の枠を超え、世代や国境を越えて世界中に愛読されている。『モモ』の日本語版は150万部を突破し、ドイツ語版に次いで多く読まれている。1989年、東京などで「エンデ父子展」が開かれる。同年、『はてしない物語』の訳者佐藤真理子氏と結婚。1995年、胃ガンにより66歳で逝去。生前、自分のもつほとんどの資料を信濃町に提供。 1991年にエンデ資料を世界で唯一常設に展示する黒姫童話館が開館した。

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