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余白と照応 李禹煥ノート

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余白と照応 李禹煥ノート / 著者・酒井忠康 / 平凡社


 

言葉の照応



ヨーロッパを旅していると有名な美術館などで開催されている現代アートの展示に出くわすことがとても多くあります。日本の美術館だと名の知れたアーティストを新たな切り口によって紐解いていくような企画展がメディアなどに取り上げられるので、人が人を呼び、ある種の作られた人気の展示といったようなものに溢れています。というか、それ以外は埋没してしまっているので、自分で調べて行くほかないのでしょう。その一方で海外のそれは有名無名を問わず、何が何だかわからないようなものから、映像をついつい見入ってしまってグッたりと疲れてしまうほど、エネルギーに溢れたものまで幅広く展示されているので、そういった意味でも期待を良くも悪くも裏切ってくれるものが多い気がしています。


本書『余白と照応 李禹煥ノート』は韓国出身で日本とパリを拠点に芸術活動を行なう現代美術家・李禹煥と長年の友人であり、作家とキュレーターという関係で互いの活躍を支えあってきた酒井忠康が、知られざる作家の素顔を描きだす一冊です。この一冊にまとまっている言葉が、まさしく現代アートを鑑賞しているような作用を起こしてくれます。石、木、紙、綿、鉄板、パラフィンといった〈もの〉を単体で、あるいは組み合わせて作品とする『もの派』を評価し理論づけた李禹煥の言葉は、ものづくりに携わる方、ものを伝える方、ものを販売する方、さらにはものを使う方にとって新鮮な気づきを与えてくれる一冊です。

それも説教臭く理論をまとめているのではなく、何気ない言葉から考えさせられる印象を与えてくれるのがとても心地よく感じます。まさしくこの作用、李禹煥の言葉を借りれば照応なのでしょう。


一冊で何度も楽しめてしまうそんな本書をぜひ味わってみてください。




<目次>

1(李禹煥氏の仕事)
2(省察に富む暗示―『余白の芸術』;創造的な介在;平凡な庭師のように)
3(場所との照応;虹の物差し)
4(版画―ある対談から;新作版画のこと;版という場所で)
5(M氏へ―李禹煥展のこと;もう一つの個展;“関係項―アーチ・関ヶ原”のことなど;いつもの喫茶店で;詩集『立ちどまって』を読む)


酒井忠康
1941年北海道生まれ。1964年慶応義塾大学文学部卒業後に神奈川県立近代美術館に勤務。同館館長を経て、現在、世田谷美術館館長。幕末明治期の美術をテーマとした『海の鎖』(小沢書店)、『開化の浮世絵師清親』(せりか書房)で注目され、その後、美術批評家としても活躍。

 

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