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〈生かし生かされ〉の自然史──共生と進化をめぐる16話

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〈生かし生かされ〉の自然史──共生と進化をめぐる16話 / 著者・渡辺 政隆 / 岩波書店



自然にもっと敬意を!



家庭菜園をやっていると切っても切れない、いや刈っても生えてくるものといえば草でしょう。いわゆる世にいう雑草と一括りにされて言われがちですが、畑での作業の年月を重ねていると全て同じような草のようでいて、一つ一つが異なる植物だということが実体験として理解できてくるはずです。

そしてある植物はなぜか決まったところで群生していたりしています。これは土壌の中の細菌や微生物や虫の量、さらには土の中の水分量などに左右されながら、その場所で命が芽吹き、やがて朽ち果てていった結果の積み重ねでもあるのです。

その姿を俯瞰して見てみると、私たち人間なんかよりもずっと多様であり、その多様な状況や環境がさらにさまざまな命が生まれていく土壌を育んでいるのです。

厄介者とされがちな雑草ですが、私たちはもっとこの雑草と言われるものに感謝をしなくてはならないのかもしれません。


さて、本書『〈生かし生かされ〉の自然史──共生と進化をめぐる16話』はサイエンティスライターの渡辺政隆さんの幅広い視野と確かな知見に基づいて、生きものと科学への愛に溢れたエッセイ集です。

『地球上の生命はみな、単独では生きてゆけない。』と語る渡辺さん。動物と植物の持ちつ持たれつの関係や、驚きの生存戦略、進化と生態系をめぐる複雑な仕組みを、最先端の研究を踏まえ、時に皮肉も交え軽妙な筆致で綴ります。


地球は今、大きな転換点にある。気候変動、林似認、新興感染症の猛威等々、いずれも相互に関連していそうな異変が進行中である。・・・地球は過去に五回の大量絶滅を経験してきた。しかしじつは、われわれ人類こそが絶滅危種なのかもしれない。

科子の発展により、生きものに対する理解は格段に深まった。しかしその結果として絶滅危機種となったわれわれは、血の通った科学という原点に立ち戻るべきなのかもしれない。(「はじめに」より)



今一度、植物や自然に対し敬意を示した行動をとるべきなのかもしれませんね。



<目次>

 はじめに―朝顔の力学


Ⅰ 生きるための知恵

 1 生きる力

 2 プロメテウスの贈り物

 3 相方探し

 4 キリンのくび、パンダの腸内フローラ


Ⅱ 植物の妙計

 5 ランの美しい誘惑

 6 植物の奸計あれこれ

 7 芳香とキューピッド

 8 禁断の果実イチジク


Ⅲ 共生の謎

 9 菌類異聞

 10 平和共存の森

 11 緑の上陸作戦


Ⅳ 進化と生態系をめぐる綾

 12 意外に保守的な文化戦略

 13 雑草をつくる神の手

 14 生きものたちの眠れぬ夜

 15 カタールの青い芝

 16 植物の底力と多様性をめぐる迷走



 おわりに

 注




渡辺政隆
1955年生まれ。サイエンスライター、日本サイエンスコミュニケーション協会会長、東北大学特任教授、同志社大学客員教授。東京大学大学院農学系研究科修了。専門は科学史、進化生物学、サイエンスコミュニケーション。

著書に『一粒の柿の種』(岩波現代文庫)、『ダーウィンの遺産』(岩波現代全書)、『ダーウィンの夢』(光文社新書)、『科学で大切なことは本と映画で学んだ』(みすず書房)、『科学の歳事記』(教育評論社)ほか。翻訳書に『ワンダフル・ライフ』(ハヤカワ文庫)、『種の起源(上・下)』『ミミズによる腐植土の形成』『ロウソクの科学』(以上、光文社古典新訳文庫)、『進化理論の構造』(工作舎)など多数。

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