古来種野菜を食べてください。 / 著者・高橋一也 / 晶文社
この一冊は著者である高橋一也さんがどのように種というものに興味を持ったのかというところから現在の農業や種に対する問題提起、そしてご自身で取り組まれている活動までを一緒に辿れるような内容になっています。
その土地で先人から受け継がれている種を元にした農、そして古来種野菜たち。
これらがなくなってしまうことは、地域の特色を色濃く残した食文化や文化自体が消滅してしまうこととも言い換えられることは、読み進めれば進めるほど実感できてきます。
こういったことに意識が向いている方はもちろんのこと、まだあまりピンとこない方も、最初の章の方で、どうして高橋さんが種が大切だと思ったのか振り返っているところを読むと、その情景がとてもリアルに感じられます。
今の日本の有機野菜やオーガニックの基準の成り立ちなども詳しく論じられていて、客観的にとても納得感が得られる内容です。巻頭ページにはカラーの古来種野菜の写真が掲載されていますが、一つ一つがとても個性的で生き生きとしています。
さて、本書で言及されていますが、この内容はあくまで著者である高橋さんの視点であって、これを読んでみて「あたながどう思うのか?」がとても肝心だと高橋さんも語られています。
この一冊が何かのきっかけに。
人は食べるものからできています。
お腹と心を満たしていきましょう。
【目次】
はじめに
第1章:種が大事だと言い続ける!
・僕の日常は食のことでずっとさわがしい(独立前)
・僕の中の「種」となる土台に向き合うことをはじめた(独立後)
・世界のオーガニック、日本のオーガニック
・LOVE SEED!とはwarmerwarmerの意思表明
第2章:最初に伝えておきたいことが、いくつかあって
・僕の意識がすべて正しいわけではないけど、あなたはどう思う?
・F1種の野菜のこと
・固定種・在来種の野菜が衰退したいくつかの理由
・僕が懸念していること
第3章:僕の仕事は野菜の流通、そのすべてだ――その1
・流通、それを語るその前に
・固定種・在来種の野菜を「流通の乗せ方」という視点で三つに分ける
・僕の仕事は流通だ:その1――マーケット「種市」
・僕の仕事は流通だ:その2―― ワタリウム美術館でのマーケット
・僕の仕事は流通だ:その3――warmerwarmerのお野菜セット
・これだって流通だ!――農家さんと企業をつなげること
・新規就農される方へ
第4章:種について僕たちが知らなかったこと
・僕たちは、四〇年前から続いている断続的な流れの中にいる
・そして僕は、古来種野菜という造語をつくった
・「野」の「菜」の「種」は旅をする
・種はどのように定着するの?
・端境期という時期がある
・日本が世界に誇る多様性
第5章:種まく農家と美味しい関係
・美味しい関係って?
・農家さんと僕
・ある農家/野菜との出会いがすべてを変えた
――長崎県雲仙市の種採り農家 岩崎政利さん
・僕には野菜の師匠がいる
・それは在来野菜からのギフトだった
第6章:僕の仕事は野菜の流通、そのすべてだ――その2
・東京に地方の野菜を集める理由
・再生プロジェクトを成功させる方法
・百貨店で在来野菜の販売がスタートした
・伊勢丹新宿本店との取り組みのいくつか
第7章:未来への種をまく
・子どもたちに伝えたいこと
・食のはぐくみかた――在来野菜の味覚
エピローグ:八百屋の日々
高橋一也
1970年生まれ。高等学校卒業後、中国上海の華東師範大学に留学。その後(株)キハチアンドエス青山本店に調理師として勤務する中「有機野菜」と出逢う。1998年に自然食品小売業(株)ナチュラルハウスに入社。アメリカ「ホールフーズマーケット」、ドイツ「ベーシック」等をベンチマークし、世界のオーガニック事情を捉えながら、同社の事業を無添加食品事業からオーガニック食品への切りかえに推進、店舗統括、販売企画、商品部青果バイヤー等の業務から取締役へ就任。売上高50億円の会社経営に携わる。
2011年3月の東日本大震災をきっかけに、同社取締役を辞任。古来種野菜(固定種・在来種)の販売事業の構築、有機農業者支援、次世代のオーガニック市場の開拓を目的にwarmerwarmerとして独立。