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中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1

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中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1 / 著者・中村好文 / 学芸出版社



美しき台所の風景




昔、a quiet dayという北欧のクリエイターたちへのインタビューをまとめたマガジンを制作していた時に度々訪れていたデンマークの首都・コペンハーゲン。この街を拠点に世界的なデザインスタジオとして知られていたall the way to parisのペトラと知り合って、滞在中は何かと融通をきかせてもらい、ヴィンテージの陶器やガラスでいっぱいの荷物などをオフィスの一角に置かせてもらったり、食事に連れて行ってもらったりしていました。中でもとてもいい時間だったなと思うのが、オフィスのランチをご一緒したこと。ここのスタジオでは、毎日スタッフが代わりばんこでランチ当番をしていてランチをみんなで一緒に食べます。多国籍の集団なのでベジタリアンメニューが多い印象でしたが、旅先で野菜不足をどうにかできないものかといつも感じるので、そういった意味でも毎回とても楽しみにしていました。『同じ釜の飯を食う』という言葉が日本にはあるように、みんなで面と向かって食事を共にするということは、限られた時間ではあるものの、共体験を生み出す美味しい風景だったことを、今は遠い目をして思い出すのです。


さて、こちらの『中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1』は自他共に認める食いしん坊で料理好きの建築家・中村好文さんが手がけた設計、特に台所を中心にまとめられた一冊です。夫婦、家族、オフィスなど様々なシチュエーションやライフスタイルのクライアントからの依頼を形にしてきた中村さんが特に力を入れているのが『台所』、そしてそこから生まれてくる『風景』を大切に考えられていることが伝わってきます。そして何を隠そう、中村さんご自身の事務所が先にエピソードとして挙げたall the way to parisのオフィスランチと同じく持ち回りでその日の昼食を作り、みんなで食べるというスタイルなのです。


人が生きていくためには必ず行なうことでもある食事。

それらが生み出される台所をもう一度考えたくなる一冊です。

おっと、利便性だけを追い求めてはいけません。

美味しい風景が作り出せるかということをもう一度この一冊から見直してみてもいいかもしれません。



<目次>


1 意中の台所

その1 ジョンの台所
その2 今井町の勾玉型の竈
その3 ヴェネツィア暮らしの台所
その4 Lemm Hutの七厘レンジ
その5 フィリップ・ジョンソンご自慢の台所


2 五つの台所


明月谷の家――小柄な主婦のためのコンパクトな台所
つのだ夫妻の家――夫婦が阿吽の呼吸で働く台所
休寛荘――料理好きが寄ってたかって働くための台所
Hanem Hut――七厘で料理する極小の台所
レミングハウス――食いしん坊ぞろいの設計事務所の台所

あとがき



中村好文
建築家。1948年千葉県生まれ。72年武蔵野美術大学建築学科卒業。設計事務所勤務を経て、東京都立品川職業訓練校木工科で家具製作を学ぶ。81年レミングハウス設立。87年「三谷さんの家」で第1回吉岡賞受賞。93年「諸職の技術を生かした住宅」で第18回吉田五十八賞特別賞受賞。19992018年日本大学生産工学部建築工学科教授。 主な著書に『住宅巡礼』『住宅読本』『意中の建築』(以上新潮社)、『普通の住宅、普通の別荘』『小屋から家へ』『集いの建築、円いの建築』(以上TOTO出版)、『食う寝る遊ぶ 小屋暮らし』(PHP研究所)、『湖畔の山荘設計図集』(エクスナレッジ)など多数。

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