面影 book&craft

KISSA BY KISSA 路上と喫茶ー僕が日本を歩いて旅する理由

販売価格 価格 ¥2,500 通常価格 単価  あたり 

税込 配送料は購入手続き時に計算されます。

KISSA BY KISSA 路上と喫茶ー僕が日本を歩いて旅する理由 / 著者・クレイグ・モド、翻訳・今井栄一 / BOOKNERD

 

 

グランドレベルの息遣い

 

 

昔、北欧のクリエイターたちに取材をしていたころ、知人の紹介でデンマークの首都・コペンハーゲンで活躍する、とある建築家とカフェで落ち合った。彼の少しユニークな建築論を聞き、話している時に彼が例に出した雑誌をいただけることとなり、そのカフェから彼の自宅まで散歩しながら話の続きをしようかということになった。
自転車文化が進んでいるデンマークなのできっと彼も自転車なのかと思いきや、脇に抱えるのはスケートボード。彼の生活の中心がこのスケートボードなのだとか。その訳を聞いてみると、スケートボードは自分が地面を蹴り上げることで進めること、そして何よりボードを伝って感じられる“街の振動”が建築家にとって重要なグランドレベルでの実測や経験に繋がっているとのことだった。その感覚の言わんとすることは理解できる。自分も初めて降り立った地や旅先では、なるたけ徒歩移動を心がけているのもそうしたことを掴みたいからというのが大きい。その方がその土地との繋がりを感じられるし、文字通りその土地の空気感を肌感覚でインプットできるのだ。

 

さて、本書『KISSA BY KISSA 路上と喫茶ー僕が日本を歩いて旅する理由』はまさにそんな歩いて土地の空気感を掴んだ経験が詰まっている。といってもそのレベルは自分の徒歩移動などは足元に及ばない。というのもアメリカ生まれの著者で作家のクレイグ・モドさんが歩いたのは東京から京都を結ぶ、全長一千キロの旧中山道だからだ。江戸時代の参勤交代ならまだしも、現代でこの距離を歩くというのはなかなか無い経験なのではないだろうか。

ただ歩くというシンプルな連続運動の中で、そこで目の前に広がるありのままの世界はインターネットにもSNSにも存在しない“現実”なのだということをクレイグ・モドさんの文章からは伝わってくる。身体性の中で感じられる社会の姿という訳だ。
そんな一見孤独とも感じられる一人歩き旅の中で唯一の楽しみはその土地の喫茶店に足を運ぶこと。海外で生まれ育った方の視点で、外からもたらされたコーヒー文化や日本で独自の進化を遂げた『ピザ・トースト』は私たち日本人が忘れてしまった日本人としての良さやユニークさを思い出させてくれることだろう。斯くいう僕自身が本書を読み、あらためて『ピザ・トースト』のユニークさと美味しさに感銘を受けてしまい、そこから毎週末は『ピザ・トースト』を食べている始末である。

 

喫茶店。パチンコ店。田園。山道。シャッターの降りた商店街。

アメリカ人である著者が徒歩で古き良き日本の街道を歩き、見つめた失われゆく日本の姿を、写真とテキスト、そしてたくさんのコーヒーとピザ・トーストとともに文化考現学的視点で捉えた、日本在住の作家・ライター、クレイグ・モドによるまったくあたらしいロード・エッセイ。

 

2020年に彼が英語版で自費出版した『KISSA BY KISSA』を、当店出版部より装いも新たに日本語版として刊行。日本版独自のあとがきを追加。

 

 

歩くことに興味がある方、外の視点で日本を考えてみたい方、そして『ピザ・トースト』が気になる方は必見の一冊である。

 

藤原印刷さんが手がける仮フランス装により、存在感が増し愛着が湧くことだろう。

 

B6版・仮フランス装・160ページ

 

 

 

 

Craig Mod
作家、写真家、歩いて旅をする人。
1980年、アメリカ・コネチカット州生まれ。2000年より日本在住。
著書に『Things Become Other Things』(2023年)、『Kissa by Kissa 日本の歩き方』(2020年)、『Koya Bound 熊野古道の8日間』(2016年)、『僕らの時代の本』(2015)、『Art Space Tokyo』(2010年)など。『The New York Times』『Eater』『The Atlantic』『The New Yorker』『WIRED (米国版と日本版)』などに寄稿・執筆。

x