14歳のための宇宙授業 相対論と量子論のはなし / 著者・佐治晴夫 / 春秋社
星々を眺めて
小さい頃、都立の大きな公園の近くに住んでいたので、週末は父とほぼ一日中遊んでいた記憶がある。記憶にある初めて飲んだジュースはその公園の自販機にあったカルピスウォーターだったし、自転車に一人で乗れたのもその公園だった。何度も父と遊んでいるうちに遊びの勝負事に負けてしまったり、喧嘩して泣いたこともあった。
そんな思い出深い公園からの帰り道、夕日で空がオレンジ色に変わり次第に暗くなっていく様子を自転車の後ろに乗せてもらいながら見上げていると、空に光っている一番星があって毎度その一番星をどちらが先に見つけるかということを競っていた。ほとんど自分の方が気がつくのが早かったように思うけれど、父は僕が見つける前からきっと気づいていたのだろうと、大人に、そして親になった今だからこそ思うのだ。
さて、本書『14歳のための宇宙授業 相対論と量子論のはなし』は一番星だけでなく、それらを取り巻く宇宙全体の相対論と量子論のはなしがまとまった一冊だ。相対論と量子論と聞くとなんだか難しそうなそんな印象を受けるかもしれない。けれど本書は毎月や季節の便りとしてまとめているエッセイ調の文章なので、タイトルにもあるように14歳くらいの知識があれば読み進めていくことは容易だろう。
「無」としかいいようのない状態から、突如、まばゆい光として誕生した宇宙。
私たちすべての存在をかたちづくる素粒子。
夜空の星の煌めきからクォークやゲージ粒子まで、このかけがえのない世界を記述する現代の物理学理論の2つの柱を、わかりやすく詩的に綴る宇宙論のソナチネ。
「この本は、私たち「星のかけら」が、じっと耳をかたむけていると、かすかに響いてくる広大無辺な宇宙とそれらをつくっている小さい素粒子からのメッセージをお伝えするものです。ややこしい数式や理論がわからなくても、直接、感性に訴えかけるような物理学や数学のやさしい言葉の窓を通してならば、自然の不思議さや美しさをかいまみることはできるでしょう。」(「まえがき」より)
<目次>
まえがき
第1章 宇宙・不思議ないれもの
第2章 素粒子・この小さな宇宙
第3章 宇宙・素粒子・わたしたち
あとがき
かつて14歳だったみなさんへの参考ノート
理解を深めるための読書案内
佐治晴夫
1935年東京生まれ。理学博士(理論物理学)。 東京大学物性研究所、松下電器東京研究所を経て、玉川大学教授、県立宮城大学教授、鈴鹿短期大学学長などを歴任。現在、同短期大学名誉学長、大阪音楽大学大学院客員教授、北海道・美宙(MISORA)天文台台長。 量子論的無からの宇宙創生に関わる「ゆらぎ」の理論研究の第一人者。現在は、宇宙研究の成果を平和教育へのひとつの架け橋と位置づけ、リベラルアーツ教育の実践にとりくんでいる。日本文藝家協会会員。