日本人にとって美しさとは何か / 著者・高階 秀爾 / 筑摩書房
日本のカルチャーの代表格となっている『漫画』。ひと昔前は子供たちの読むものと一線をひかれていたけれど、今では立派な日本の文化財という位置付けが出来てきました。この『漫画』をよくよく考えてみると、絵(イラスト)と文字が一つの場所に一体となる形で表現されており、西洋文化と比較してみると、西洋文化の絵画などは決して絵の上などから文字が描かれることはありません。(文字が描かれるとしても作者のサインくらいでしょうか。)
けれど日本は『漫画』に限らず屏風や絵巻物の絵の上から和歌が描かれていたり、はたまた細かい文字を羅列して構成することで一つの絵柄を表現しているものなども現存しています。
本書『日本人にとって美しさとは何か』には、そういった美術や文学などの芸術表現を異文化(西洋文化)の視点と比較しながら日本文化や美意識を明らかにしている一冊です。
こういった比較は先に挙げた芸術表現だけにとどまらず、貴族から農民までの歌を編纂した『古今和歌集』に代表されるように、時と場合によって序列をフラットにしてしまう古来の日本人特有の価値観やものの考え方などにも思考を広げることができます。
この一冊では、昔の時代の美術品などを事例に分析や考察をされていますが、改めてこういったものを残しておくことによって時代が移り変わった時のメッセージになっているということが改めて理解できます。
さあ、日本人にとって美しさとは何なのでしょうか?
<目次>
1 言葉とイメージ―日本人の美意識(『古今和歌集』序文に見る日本人の美意識
勅撰和歌集の意義、図と文字が越境する ほか)
2 日本の美と西洋の美(東と西の出会い―日本および西洋の絵画における表現様式についての諸問題、和製油画論、感性と情念―「和製油画」に支えたもの ほか)
3 日本人の美意識はどこから来るか(絵と文字、漢字と日本語、襲名の文化 ほか)
高階 秀爾
1932年東京生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院およびパリ大学で近代美術史を専攻。国立西洋美術館館長をへて現在、大原美術館館長、東京大学名誉教授。ルネサンスから現代美術まで、あるいは西洋美術から日本美術まで、 広い視野に基づく知性と独自の感性を駆使した明晰な研究と評論で知られる。『ルネッサンスの光と闇』で芸術選奨文部大臣賞受賞。『20世紀美術』、『日本近代美術史論』、 『ゴッホの眼』、『想像力と幻想』などの著書のほか、クラーク『ザ・ヌード』、ウィント『芸術と狂気』などの訳書も多い。