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日本まじない食図鑑

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日本まじない食図鑑: お守りを食べ、縁起を味わう / 著者・吉野りり花 / 青弓社


 

祈りと食



正月にはお節料理や七草粥、節分には恵方巻き、ひな祭りにはちらし寿司、春分の日には牡丹餅、端午の節句には柏餅に菖蒲湯、夏の土用は鰻、秋分の日にはお萩、冬至に南瓜と柚子湯といったように我が家では生まれた時から季節にまつわる行事やそれに伴う食をいただくことをしっかりとやっていた印象です。子どもの時はそれが面倒で、ある年の暮れの冬至では柚子湯に入れる柚を湯船の脇にほったらかして入れずに入浴したことで、なぜか入るまでは風邪っぽくもなかったのに湯上がりからゾクゾクし始め、翌日から高熱をだして、子ども心にこれを蔑ろにしたからきっとバチが当たったんだなと、神様やお天道様に許してほしいと反省の弁を心の中で述べたことは私の記憶にしっかりと刻まれています。


さて、本書『日本まじない食図鑑: お守りを食べ、縁起を味わう』は、旅ライター・エッセイストの吉野りり花さんが全国各地を尋ねて、季節の節目の行事食や地域の祭りの儀礼食、五穀豊穣などを願う縁起食など、願いを託して食べられるものを〈まじない食〉と定義して、日本全国に息づく「食べるお守り」とその背景にある民俗・風習、それを支える人々の思いをカラー写真とともに紹介している一冊です。先に挙げた季節の食べ物や行事ではないもっとディープで知られていない地域の行事とそれに合わせたまじない食がまとまっています。地域に閉じた催し事や祭りが多いことで、吉野さんが取材を兼ねて参加されることに地域の方たちから驚かれている様子や恐る恐るそれに参加している感じが文章から伝わってくるのがとても印象的で自分も実際にその場に居合わせているような気さえしてきます。


様々なまじない食や行事がまとめられているのですが、共通するのが『祈り』。健康であるように、五穀豊穣を願ったり、安産を祈ったりと、人々がこうありたいと願っている未来に向けて差し出された『祈り』や『食』は地域性や食材の性質、季節の特徴の巡り合わせになっており、均一化してしまっている現代にこそ残していきたい文化だなと強く感じさせられます。


私たちにできることは、まず自分の近所のこういった行事に参加してみるということなのでしょうね。そんなきっかけの一冊です。


<目次>

はじめに――ごあいさつに代えて

第1章 まじない食を訪ねる旅へ――なぜ、まじない食に興味をもったのか

第2章 キュウリが夏の病の身代わりに――神光院の「きゅうり封じ」[京都府京都市]

第3章 巨大なワラ人形で厄落とし――若神子のほうとう祭り[山梨県北杜市]

第4章 若者たちが切り分けた塩鯛を安産のお守りに――早魚神事[福岡県福岡市]

第5章 豆腐を食べて一年分の嘘を帳消しに――八日吹きのうそつき豆腐[鳥取県鳥取市]

第6章 一年のはじめに豊作を祈る――民話のふるさと遠野の小正月[岩手県遠野市]

第7章 龍神様のナスが夏の毒消しに――お諏訪様のなすとっかえ[埼玉県狭山市]

第8章 巨大なタラを担いで大漁祈願――掛魚まつり[秋田県にかほ市]

第9章 男の子の健やかな成長を祈る――八朔の団子馬[香川県丸亀市]

第10章 大根を食べると中風にならない――鳴滝・了徳寺の大根焚き[京都府京都市]

第11章 お釈迦様のはなくそで病よけ――涅槃会と花供曾あられ[京都府京都市]

第12章 馬っこに団子を供えて豊年満作――馬っこつなぎとしとぎ団子[岩手県遠野市]

第13章 都会のまじない食――しょうが祭りのしょうが、こんにゃくえんまのこんにゃく、氷室祭りのカチワリ氷[東京都八王子市・港区・文京区/大阪府大阪市]

参考文献一覧

巻末資料――まだまだある、全国の食べるお守り・まじない食

あとがき


吉野りり花

旅ライター・旅エッセイスト。鹿児島県生まれ。早稲田大学第一文学部(日本文学専修)卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスライターに。日本各地を旅した経験を生かし、日本の旅や食文化のエッセーやコラムを執筆する。現在は「NIKKEI STYLE」(日本経済新聞社・日経BP社)、「大人のレストランガイドNEWS」(日本経済新聞社・ぐるなび)、各種会員誌などに旅エッセーや食文化コラムの連載をもつ。

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