あしたの風景を探しに / 著者・馬場正尊 / どく社
建築と編集
建築と編集。
一見異なるものに見えるけれど、その本質的な考え方や捉え方には共通点が非常に多くあるのではなだろうか。まずは建築であればその空間、つまり内的空間と外的空間をどんな風にしていくかを決め、編集であれば誌面の本文や表紙をどのようにしていくかなどをコンセプトベースで決めていく。
編集側からの視点で言えば、誌面というものは擬似的な建物のように捉えることもできる。実際に誌面の中に身を置くことはできないけれど、文章や中身の中に没入しその中の行間や写真のレイアウトデザインによって感覚として感じられる空気感というものは、建物の中に身を置きそこの空気感に酔いしれることと近しいものなのだろうと思う。
自分は建築家ではなく、編集者の端くれとしていつも考えているのは、その媒体を手にした方たちがどのような感覚を体験できるのかということなのだが、そうした一見言語化しにくい建築と編集の二つのジャンルに橋を架け活躍しているのが、建築家/Open A 代表取締役/東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学教授の馬場正尊さんだ。
本書『あしたの風景を探しに』では建築設計を軸にリノベーションやまちづくり、
公共空間の再生を牽引してきた建築家・馬場正尊によるアイデアを生む論考集。
どんな風景のなかに生きていたいのか、本書のタイトル『あしたの風景を探しに』にもあるようにまずこうした問いかけが全体を通して読者に問われているのだ。
リノベーション・ムーブメントを牽引した「東京R不動産」の立ち上げをはじめ、
新領域への越境をつづけてきた“風景の建築家”は今日も世界を縦横無尽に駆け回り、仕事と生き方をめぐる思考とそこでの記憶を巡らす。
「次の時代の都市が、風景が、なにを欲しているか。それを探すために、また旅をし、言葉を紡ぎ、建築をつくる。それを繰り返してきたし、これからもつづけるのだろう」(本文より)
「先が見えない」を愉しみたいすべての人へこれからの働き方、生き方を導く一冊。
本書を一読すれば、一見関係ないような点同士を結び線にし、それを面にしていくことで形作られていく“風景”を目の当たりにするのではないだろうか。
<目次>
マイクロメディア
リノベーション
エリアリノベーション
新しい郊外
パブリック
工作的建築
PLAY
パークナイズ
クリエイティブローカル
ポスト・ビルディング
馬場正尊
建築家/Open A代表取締役/東京R不動産ディレクター/東北芸術工科大学教授。1968年佐賀県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、博報堂入社。博覧会やショールームの企画等に従事する。その後、早稲田大学大学院博士課程へ復学。建築とサブカルチャーをつなぐ雑誌『A』を立ち上げ、編集長を務める。2003年、建築設計事務所Open A設立。建築設計、リノベーション、都市計画、執筆などを行う。同年、都市の空地を発見するWebサイト「東京R不動産」をスタート。建築設計を基軸としながら、メディアや不動産などさまざまな領域を横断しながら幅広い活動を展開している