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僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生」の物語

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僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生」の物語 / 著者・森田真生 / 集英社



生きる眼を養う



本屋を営んでいると不思議な瞬間に出くわすことがよくあります。ここ数年定期的に足繁くお店に通ってくださっているお客様が一冊の本を手にします。手にした際のリアクションは、『うわぁ!これずっと探していた本だったんだ!』といった感じです。そんなお目当てに出合ってもらえて、こちらとしてはお店をやっていて良かったなと思う反面、いや待てよ、この本は以前からというよりは開業当初からお店の中には陳列していたはずで、お客様も何回も目にしている筈なのでは、と疑問に思うのです。
それはそのお客様特有のことではなく、自分が客の立場になって他のお店で商品を見ていても、『うわぁ!これずっと探していた本だったんだ!』とずっとそのお店にあったはずのものを手にすることがあるのです。

そうです。私たちは見えているようで見えていない。見ているようで見えていないのです。というよりは、その時の感覚が開ききっていないので、そのものを受け止める準備がまだできていなかったというように考えることもできるのでしょう。

つまるところ、私たちを取り巻く世界というものは、私たちが思い感じているよりも、ずっと広く大きいものなのでしょう。


そう感じさせてくれたのは、本書『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生」の物語』です。

本書の舞台は2020年春。未知のウイルスの拡大と、地球規模の気候変動を前に、あたりまえの日常は失われつつあった時に遡ります。独立研究者として全国を飛び回っていた著者の森田真生さんは、京都の自宅で幼い息子たちと菜園作りを始めます。裏庭の草花や生き物との交流。子どもたちとの他愛ない会話。その生活は、感動と発見に満ちていた! 先の見えないこの時代を、いかに生きるべきかを模索し続けた4年間を綴ったドキュメント・エッセイです。

本書を読んでいると、先の見えない時代の中で今まで見えていなかった、見えてこなかったものが見えてくることが体験ベースで語られています。研究者からの目線ということもあり、主観だけでなく客観的にその状況が描かれているので、私たちの生活も照らし合わせながら読み進めていくことができます。


生きる眼を養う。
そんな助けになる一冊です。


<目次>

はじめに

春 / STILL

夏 / Unheimlich

秋 / Pleasure

冬 / Alive

再び、春 / Play

おわりに

再生 / Replay

寄稿「そして、僕たちはどう生きるか」 早坂大輔

文庫版あとがき



森田真生
1985年生まれ。独立研究者。2020年、学び・教育・研究・遊びを融合する実験の場として京都に立ち上げた「鹿谷庵」を拠点に、「エコロジカルな転回」以後の言葉と生命の可能性を追究している。著書に『数学する身体』(2016年に小林秀雄賞を受賞)、『計算する生命』(2022年に第10回河合隼雄学芸賞受賞)、絵本『アリになった数学者』、随筆集『数学の贈り物』、編著に岡潔著『数学する人生』など。

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