健康と食事 / 著者・ルドルフ・シュタイナー、翻訳・西川 隆範 / イザラ書房
私とは一体なんなのだろうか?
信州・上田に移住を機に朝食をパン食から米食に変えました。それまでは人生の大半、朝はパンとコーヒーを食してきて、朝に米なんか喉を通るものかと思っていたほどでした。移住したのが真冬の2月。東京の冬とは打って変わって寒さが厳しく起き抜けの体は寒さでどんどん強張っていったのを自分自身でも感じるほどでした。意を決して朝も試しに米にしようと決心し、いざ食べ始めてみると体の底からじんわりと温まっていく感じと、車にガソリンが補給されるが如く、みるみる内に活力が湧いてくるではありませんか。はじめは一週間だけ続けてみようと試みていましたが、以来この文章を書いている現在まで朝食に米食が続いています。
『食でカラダは作られている』様々な方達が使ってきたこの言葉。いや使い古されて一周して忘れてしまっている方も多いのではないのでしょうか。オーストリアやドイツで活動し神秘思想家、哲学者、教育者のルドルフ・シュタイナーが書いたこの『健康と食事』を読んでみるとこの言葉の意味を再認識できることでしょう。しかも表面的な物質体への食からの影響だけでなく、私たちが普段意識していない精神的な部分や生命そのものとしてどのように食から影響を受けているのかということを発見できると思います。
それを端的に表す表現としてこんな言葉が冒頭で紹介されています。
「人間は食べるところのものである。」
根・葉・実。それぞれの野菜などの主食される場所によって、自分たちの思考に大きな影響を与えていくそうです。それまでそんなことを意識したことがなかったのでとても驚きでした。
そんなことを読みながら考えていると、ふと私とは一体なんなのだろうか?と疑問が湧いてきました。私というものは食の中に潜んでいるのかもしれませんね。
食には多様な考えがあり、唯一無二の答えはありませんが一つの視点を考えてみるきっかけになる一冊です。
<目次>
肉食と菜食
蛋白質・脂肪・炭水化物・塩(一)
蛋白質・脂肪・炭水化物・塩(二)
根・葉・実(一)
根・葉・実(二)
酒とタバコ(一)
酒とタバコ(二)
修行と食事(一)
修行と食事(二)
シュタイナー・ルドルフ
哲学博士。1861年旧オーストリア=ハンガリー帝国(現クロアチア)クラルイェベックに生まれる。1925年スイス・ドルナッハにて没す。ウィーン工科大学で、自然科学・数学・哲学を学ぶ。ゲーテ研究家・著述家・文芸雑誌編集者として、世期末のウィーン、ワイマール、ベルリンで活躍。二十世紀になると、このような一連の活動の成果を踏まえて「アントロポゾフィー(人智学)によって方向づけられた精神科学」へと足を踏みいれる。スイス・バーゼル市近郊ドルナッハにみずから設計したゲーテアヌムを建設し、普遍アントロポゾフィー(人智学)協会本部とした
西川隆範
1953年、京都市に生まれる。シュタイナー幼稚園教員養成所講師、シュタイナーカレッジ客員講師を経て、育児のかたわら、精神史・文化史を研究。おもな著書・訳書に,『シュタイナーの宇宙進化論』『神秘学概論』『音楽の本質と人間の音体験』(いずれもイザラ書房)ほか