収穫 人と空と大地──ともに稔るバイオダイナミック農法 / 著者・クラウディア・シュトックマン、 アンドリュー・ウォルパート、竹下哲生 / マグノリア書房
人智を超えた世界
どんなに都会に住んでいようとも木の一本や二本は自分の身の回りに生えていると思います。その木々や自然は、人間が日々手をかけずとも、ある程度は自ら成長し季節によっては葉を落とし、そして翌年にはまた葉や花や実を生い茂らせ自ずからそこにある状態で生きています。大地に根を張り、そこから生態系の循環が生まれていく様を見ていると、地球自体が有機的な生命体であるということが自然と納得いくのではないでしょうか。
本書『収穫 人と空と大地──ともに稔るバイオダイナミック農法』を読み進めていくとまさしく先にあげた地球はもとよりその大地で生を営む全ての生命体が全て宇宙とひと繋がりであるということが理解できる内容となっています。本書はルドルフシュタイナーが提唱した『バイオダイナミック農法』の実践者が福島にあるマグノリア農園で講演した内容がまとまった一冊なのですが、提唱者のルドルフシュタイナーが言っているように『必ずこれをやらなくてはいけない』といったような定義がある農法ではないので、本書の中で語られている内容も具体的な農法云々というよりは、対話や自立や依存、調和などという切り口をトピックに挙げながら、宇宙からの影響や私たち自身や生活との関係性について話が進められています。
世の中には人の知恵や知識などでは到底解明できないけれど、事象としてそこに存在することは多かれ少なかれあるはずです。人智を超えた世界を覗き込むきっかけになるような一冊になっています。
＜目次＞
第１章 「農業と宗教」シュトックマン司祭をお招きして（若々しい農業/ 美しき祝祭 ほか
第２章 「調和～メルクリウス（水銀・水星）」アンドリュー・ウォルパート氏をお招きして（雫（しずく）/ メルクリウス＝ヘルメス ほか）
第３章 「収穫」マグノリア・ガーデン・レクチャー１ マグノリア農園（いただきます/ 与える・受け取る ほか）
第４章 「収穫」マグノリア・ガーデン・レクチャー２ マグノリア農園（収穫と感謝/ 非対称な関係性 ほか）
クラウディア・シュトクマン
1946年バーゼル生まれ。大学でドイツ文学・歴史、フランス語を学び、その後治療教育を学ぶ。小学校教育、治療教育に携わり、1984年にキリスト者共同体の司祭に就任。現在コルマール集会に勤務している。 マグノリアの灯の活動に賛同し、5年間福島に通い続けてくれている。
アンドリュー・ウォルパート
1947年ロンドン生まれ。英エマソン・カレッジでThe Spirit of Englishコースを18年にわたって指導。日本では、アントロポゾフィーの認識を背景として、教育学・歴史学・文学・語学・美学と多岐に渡る主題で講演会・ワークショップを行っている。
竹下哲生
1981 年香川県生まれ。2000 年渡独。2002 年キリスト者共同体神学校入学。2004年体調不良により学業を中断し帰国。現在、四国アントロポゾフィー・クライス代表として活動中。訳書『キリスト存在と自我～ルドルフ・シュタイナーのカルマ論～』(SAKS-BOOKS)、『アトピー性皮膚炎の理解とアントロポゾフィー医療入門』(SAKS-BOOKS)
