チョコレートの手引 / 著者・蕪木祐介 / 雷鳥社
チョコレートはどこからやってきたか
面影 book&craftでも年間を通して定番商品になっているリトアニアのBean to BarチョコレートのChocolate Naive(チョコレート ナイーブ)。このブランドの創業者でオーナーショコラティエでもあるDomantas Uzpalis(ドマンタス・ウジュパリス)はもともとITと都市開発の仕事をしており、食とは無縁でした。けれど当時から、自分たちが何を消費し、どこから食べ物はやって来るのかということに、非常に興味があり、そういった好奇心をベースに、独学でBean to Barチョコレートづくりをはじめ、自宅のガレージでスタートしたチョコレート研究の精度は年々向上し、現在はチョコレートを作る機械も自身で設計、ナイーブの特徴的な口溶けの良いチョコレートを自ら工場に立ち、日々丁寧に作っています。
彼の好奇心と行動力には目を見張るものがありますが、チョコレートを消費する側としても、どうしてここまでチョコレートは人を惹きつけるのかなと思ってしまいます。
チョコレートの原材料のカカオ。これは紀元前から人々に愛されていてというよりは神話の神々たちから特に愛されていたようでとても神聖な食べ物であったということが本書『チョコレートの手引』には書かれています。そしてマヤ文明やアステカ文明ではカカオは今の使い方ではなく、飲み物として親しまれていたというから驚きです。
本書は、そんな知っているようで全然知らないチョコレートのことを、チョコレート技師としてメーカーなどで働いている著者の蕪木祐介さんが、カカオがどのように生産され私たちが楽しめるチョコレートという製品になるまでのプロセスを細かくまとめてくれています。このプロセスを辿るだけでも様々な方たちの手を渡りながら最終的なチョコレートになっていくことが理解できます。
また、本書の中にいくつかある著者のコラムの中では、カカオの生産国と加工されたチョコレートの消費国が離れてプロセスの理解が乖離している状況への警笛や継続的に美味しく美しいチョコレートを届けていくか、という問題にも目を向けられています。
まさに甘いだけではなく、ほろ苦いチョコレートのようなチョコレートの現実を理解できる一冊になっています。
チョコレートはどこからやってきたのか。
奥深いチョコレートの世界へようこそ。
<目次>
1章 カカオとは
2章 チョコレートができるまで
3章 カカオの伝播とチョコレートの歴史
4章 カカオの生産国
5章 チョコレートの愉しみ方
蕪木 祐介
福島県生まれ。チョコレート技師、珈琲焙煎師。珈琲専門店に勤務し、珈琲の技術指導を受けたのち、株式会社ロッテに入社。技術者としてカカオ・チョコレートに関する研究、製品開発、チョコレートセミナー講師などの仕事を手掛ける。退社後、チョコレートのレシピ開発、カカオ・チョコレートに関する講義、カカオ栽培地での指導、品種・発酵研究などを行っている。